独学で学ぶFP2級|不動産(3)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 不動産に関する法令上の規制(1)都市計画法
- 不動産に関する法令上の規制(2)建築基準法
- 不動産に関する法令上の規制(3)区分所有法
- 不動産に関する法令上の規制(4)その他の法律
不動産に関する法令上の規制(1)都市計画法
都市計画法とは
都市計画法とは、都市計画に関する基本方針、土地利用のルール、道路や公園などの都市施設の整備、再開発といった項目について定めている法律
ここでは都市計画法で定められている、都市計画区域、準都市計画区域等について説明
- 都市計画区域…総合的に整備や開発などを行う区域
- 純都市計画区域…都市計画区域外のうち指定された区域
都市計画区域
都市計画区域とは、市街地を中心とした1つのまとまった都市として総合的に整備や開発などを行う区域のこと
線引き区域と非線引き区域
線引き区域
市街化区域と市街化調整区域に線引き(区域区分)されている区域
非線引き区域
線引きされていない区域
市街化区域と市街化調整区域
市街化区域
すでに市街地を形成している区域、および、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域。用途地域が定められている
市街化調整区域
市街化を抑制すべき区域。原則として、用途地域は定めない
準都市計画区域
市街化計画区域に指定する要件を満たしていない等の理由で都市計画区域外となっているが、将来の整備・開発のためにあらかじめ規制し、将来的に整備・開発・保全されることを目的として都道府県が指定した区域
用途地域、特別用途地域、特定用途制限地域などを定めることは可能
用途地域
建物の用途ごとに地域を分けたもので住居系、商業系、工業系で計13種類ある。
- 住居系
- 第1種低層住居専用地域
- 第2種低層住居専用地域
- 田園住居地域
- 第1種中高層住居専用地域
- 第2種中高層住居専用地域
- 第1種住居地域
- 第2種住居地域
- 準住居地域
- 商業系
- 近隣商業地域
- 商業地域
- 工業系
- 準工業地域
- 工業地域
- 工業専用地域
開発許可
開発許可制度
都市計画区域内で、開発行為を行う場合には事前に都道府県知事の許可が必要
開発行為とは、開発許可制度において、建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画・形質の変更をいう(簡単にういうと、土地の整理や造成のこと)
FP2級の範囲外ですが、土地の区画形質の変更とは以下のようなことです。馴染みのない言葉ですが、内容を理解しておけばわかりやすいかもしれません。
- 区画の変更:道路、水道、公園などを新設・変更・廃止
- 形状の変更:盛土または切土を行う形成で土地の形状を変更すること
- 性質の変更:農地などの宅地以外の土地を宅地に変更すること
- 市街化区域内
1,000㎡以上(3大都市圏の規制市街地等は500㎡以上)の開発許可が必要 - 市街化調整区域
原則、許可が必要。ただし、農業・漁業用の施設や、農業等を営む者の住居を建築するための開発行為は許可不要 - 非線引き区域と準都市計画区域
3,000㎡以上の開発行為は開発許可が必要
- 開発許可と建築基準法の建築確認は別のもの。開発許可を受けても建築確認は必要となる
- 開発許可を受けたあと、開発行為の完了の公告があるまでは建築できない
- 開発行為の工事完了前でも土地の譲渡は可能
不動産に関する法令上の規制(2)建築基準法
用途制限
用途地域(13種類)と、それぞれの用途地域の制限を以下の表に示す。
○が(条件付きを含めた)建築可能な用途、×が建てられない用途
住居系 | 商業系 | 工業系 | |||||||||||
第 1 種 低 層 住 居 専 用 地 域 | 第 2 種 低 層 住 居 専 用 地 域 | 田 園 住 居 地 域 | 第 1 種 中 高 層 住 居 専 用 地 域 | 第 2 種 中 高 層 住 居 専 用 地 域 | 第 1 種 住 居 地 域 | 第 2 種 住 居 地 域 | 準 住 居 地 域 | 近 隣 商 業 地 域 | 商 業 地 域 | 準 工 業 地 域 | 工 業 地 域 | 工 業 専 用 地 域 | |
① | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
② | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
③ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
④ | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
⑤ | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × |
⑥ | × | × | × | × | × | × | × | × | × | ○ | ○ | × | × |
⑦ | × | × | × | × | × | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | × |
表の①〜⑦は、以下の建築物
- 神社・寺院・教会・公衆浴場・診療所・保健所等 : 全てOK
- 住宅・老人ホーム・図書館 : 工業専用地域以外OK
- 幼稚園・小学校・中学高・高等学校 : 工業地域、工業専用地域以外O K
- 大学・各種専門学校・病院
- 麻雀店、パチンコ店
- キャバレー
- ホテル・旅館
どの地域に、なにが建設できるかは結構出題されます。主要なものは覚えておきましょう
道路に関する制限
建築基準法の道路と接道義務
建築基準法では、建築物の敷地は、原則として、「建築基準法の道路」に2m以上接していなければならない(接道義務)。
建築基準法の道路とは、建築基準法第42条1項で幅員(ふくいん)4m以上の道路と定められている。
なお、例外的に建築基準法第42条2項で、幅員1.8m〜4m未満の道路であっても一定条件のもとに特定行政庁が指定した道路についても建築基準法の道路に含まれるとされている(いわゆる、2項道路)
裏路地などを歩くと、2項道路っぽい道路を結構見かけます。こういう道路では、新しく建築された家はセットバックしていることが多いです
セットバック
2項道路の場合は、幅員が4mの道路となるように、道路の中心から2mづつ後退した部分までを道路がみなされる。この敷地の後退した部分をセットバックという。セットバックした部分は建物の建ぺい率や容積率の敷地面積に入れることができない。また、セットバックした部分には門や塀も建築できない
片方が崖や水路などの場合は、4mになるように片方だけにセットバックするのが基本ですが、水路や崖の高さにより変わることがあります。
建蔽(ぺい)率
建蔽率とは、敷地面積に対する建物の建築面積の割合のこと。建蔽率の上限は、用途地域ごとに都市計画に従って定められている
$$
建蔽率(\%) = \frac{建築面積}{敷地面積} \times 100
$$
建蔽率の緩和
以下の場合、上限が緩和される(加算される)
- 特定行政庁が指定する角地にある建築物 +10%
- 防火地域内に耐火建築物を建てる場合 +10%
- 準防火地域内に耐火建築物/準耐火建築物を建てる場合 +10%
- 建蔽率が80%の地域の防火地域内に耐火建築物を建てる場合 100%
角地で防火地域内の耐火建築物などの場合は+20%となります(両方が適用できます)
その他建蔽率に関するポイント
- 建築物が、2つ以上の異なる建蔽率の地域をまたぐ場合は、それぞれの地域に属する面積と建蔽率の加重平均で求める
- 建築物が防火地域と防火地域以外をまたぐ場合、原則として防火地域内の建築物に関する規定が適用される
試験対策としては、規制と容積率・建蔽率から実際の容積等を計算できるようにしておきましょう。
容積率
容積率とは、敷地面積に対する、建築の延べ面積の割合のこと。容積率の上限は、用途地域ごとに都市計画に従って定められている
$$
建蔽率(\%) = \frac{延べ面積}{敷地面積} \times 100
$$
全面道路の幅員による容積率の制限について
- 敷地の接する前面道路(2つ以上の道路に接する場合は最大のもの)の幅員が12m以上の場合、容積率の最高限度は都市計画等により指定されたものが限度となる
- 敷地の接する前面道路(2つ以上の道路に接する場合は最大のもの)の幅員が12m未満の場合、容積率は都市計画で指定された限度と、以下の計算で計算された限度の低い方となる
住宅型用途地域
前面道路の幅員×10分の4
上記以外の用途地域
前面道路の幅員×10分の6
その他建蔽率に関するポイント
- 建築物が、2つ以上の異なる容積率の地域をまたぐ場合は、それぞれの地域に属する面積と容積率の加重平均で求める
- 以下のものは容積率に参入しなくて良い(面積不算入)
- 共同住宅の共用廊下・階段部分(共同住宅とはマンションなどのこと)
- エレベータの昇降路部分
- 住宅の地階(延べ面積の3分の1まで不算入)
防火規制
防火地域、準防火地域については、火災の拡大を防ぐために防火規制が設けられている
- 防火地域では、3階以上または延べ面積100㎡超えの建物は耐火建築物、それ以下は準耐火建築物にしなければならない
- 準防火地域では、4階以上ま他は延べ面積が1,500㎡を超える建物は耐火建築物にしなければならない
その他
絶対高さ制限
第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地区内は、原則として、建物の高さは10mまたは12mのうち都市計画等で定められた高さに制限される
斜線制限
道路斜線制限
道路の日照、採光、風通しに支障が出ないように建物の高さを制限するもの。すべての用途地域に適用される
隣地斜線制限
隣地の日照・風通しに支障が出ないように建物の高さを制限するもの。第一種低層住居専用地域、二種低層住居専用地域、田園住居地域以外に適用される。地域によって高さ20mまたは31mを超える部分に対して適用される
北側斜線制限
建物北側の日照を確保するために、建物の高さを制限するもの。第一種低層住居専用地域、二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住宅専用地域、二種中高層住宅専用地域に適用される
日陰規制
日陰規制とは、3階建て以上等の建物によって生じる日陰を敷地境界線から一定の範囲内におさめる規制のこと。商業地区、工業地区、工業専用地区では適用されない
建築確認
一定の建築物を建築・増改築しようとする場合には、工事の着手前に建築計画が法令で定められた基準に適合していることの確認を受けなければならない。これを建築確認という。
試験対策としては、ここは、とにかく覚えるしかないです。実務の場合は、都度確認した方が良い部分です。
不動産に関する法令上の規制(3)区分所有法
区分所有法とは
区分所有法は、マンション等の区分所有物に対するルールを定めた法律。区分所有物とは、マンションのように独立した各部分から構成されている建物のことで、各部の所有者を区分所有者という。
専有部分・共有部分・敷地利用権
区分所有物以下の2つからなる
専有部分
区分所有者の目的たる建物の部分。簡単にいうと、住居、店舗、事務所などの部分
共有部分
専有部分以外の建物の部分。廊下・エレベータ・階段など、規約により共有部分とされたものもある(集会所など)。区分所有者間の共有部分の持分割合は、原則、専有部分の床面積の割合による
敷地利用権とは、専有部分を所有するために建物の敷地を利用する権利のこと。規約で定めのない限り、専有部分と専有部分にかかる敷地利用権を個別に切り離して処分することはできない。
集会の決議
マンション等の管理組合では、最低1年に1回の集会を行う必要がある。なお、区分所有者は全員が管理組合の構成員となる
会議の決議は、普通決議と特別決議に分けられていて、それぞれ以下のようになる
- 普通決議
- 特別決議以外の決議
- 過半数の賛成で決定
- 特別決議
- 4分の3以上の賛成が必要
規約の設定・変更・廃止、形状の著しい変更を伴う共有部分の変更、管理組合法人の設立・解散など - 5分の4以上の賛成が必要
マンションの建て替え
- 4分の3以上の賛成が必要
不動産に関する法令上の規制(4)その他の法律
国土利用計画法
国土利用計画法とは、総合的・計画的に国土を利用することを目的とした法律。国土利用法に従うと、不動産の売買にあたって届出や許可が必要となる
土地取引の規制は、規制区域・監視区域・注視区域、それ以外に分類されている
規制区域
土地の取引面積に関わらず、土地の売買契約時に都道府県知事の許可が必要となる(許可制)
監視区域
都道府県が規制で定める面積以上の土地取引を行う場合は、事前に届出が必要(事前届出制)
注視区域
一定面積以上の土地取引を行う場合は、事前の届出が必要(事前届出制)
それ以外
一定面積以上の土地の取引を行う場合は、契約締結日から2週間以内に届出が必要(事後届出性)
農地法
農地を売買・転用する場合には、農地法に基づく許可が必要となる
- 権利移動(農地法3条)
農地を農地として売買する場合は、農業委員会の許可 - 転用(農地法4条)
農地を農地以外(住宅地など)に転用する場合は、都道府県知事の許可
※市街化区域では、農業委員会への届出で可 - 権利移動と転用(農地法5条)
農地を転用するために売買する場合は、都道府県知事の許可が必要
※市街化区域では、農業委員会への届出で可
試験対策として、農地法は宅建士の試験ではよく出題されている印象ですが、FPではほとんど出題されていない印象です