独学で学ぶFP2級|金融資産運用編(1)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- マーケット環境の理解(1)経済指標
- マーケット環境の理解(2)金融市場、金融政策
- マーケット環境の理解(3)マーケット変動要因
マーケット環境の理解(1)経済指標
GDP(国内総生産)
国内総生産(GDP)は、一定期間内に国内で生み出された付加価値の総額のことで、国の経済活動状況を示す指標。
付加価値とはモノやサービスを販売した時の価値から、原材料など差し引いた価値のこと。
生産(付加価値)、分配(所得)、支出(需要)の3側面でみた額は、一定期間が経過した後には等しくなるという三面等価の原則により、生産・分配・支出のいずれから見てもGDPは同じ値となる。
なお、国内総生産(GDP)の構成比を見ると、民間最終消費支出(個人消費)が最も高く50%以上を占めている
実質GDPと名目GDP
名目GDPは、実際に取引されている価格に基づいて推計された値。
物価変動の影響を受ける。
実質GDPは、基準年の価格水準を基準として、物価変動の影響を取り除いた値。景気判断や経済成長率を見る場合は、実質GDPが重視される
実質GDP = 名目GDP ー 物価変動の影響
経済成長率
経済成長率は、国内総生産(GDP)の伸び率を表したもの。
四半期ごとに内閣府が公表している。
経済成長率にも名目経済成長率と実質経済成長率があり、実質経済成長率は物価変動の影響を取り除かれている
実質経済成長率 = 名目経済成長率 ー 物価変動の影響
景気動向指数
景気動向指数は、内閣府が毎月公表している数値
先行指数が11系列、一致指数が10系列、遅行指数が9系列の合計30系列にから算出される
先行系列 | 一致系列 | 遅行系列 |
景気に先行して動く | 景気と一致して動く | 景気に遅れて動く |
① 最終需要財在庫率指数(逆サイクル) ② 鉱工業用生産財在庫率指数(逆サイクル) ③ 新規求人数(除学卒) ④ 実質機械受注(製造業) ⑤ 新設住宅着工床面積 ⑥ 消費者態度指数 ⑦ 日経商品指数(42種総合) ⑧ マネーストック(M2)(前年同月比) ⑨ 東証株価指数 ⑩ 投資環境指数(製造業) ⑪ 中小企業売上げ見通しDI | ① 生産指数(鉱工業) ② 鉱工業用生産財出荷指数 ③ 耐久消費財出荷指数 ④ 所定外労働時間指数(調査産業計) ⑤ 投資財出荷指数(除輸送機械) ⑥ 商業販売額(小売業、前年同月比) ⑦ 商業販売額(卸売業、前年同月比) ⑧ 営業利益(全産業) ⑨ 有効求人倍率(除学卒) ⑩ 輸出数量指数 | ① 第3次産業活動指数(対事業所サービス業) ② 常用雇用指数(調査産業計、前年同月比) ③ 実質法人企業設備投資(全産業) ④ 家計消費支出(勤労者世帯、名目、前年同月比) ⑤ 法人税収入 ⑥ 完全失業率(逆サイクル) ⑦ きまって支給する給与(製造業、名目) ⑧ 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合、前年同月比) ⑨ 最終需要財在庫指数 |
CI(コンポジットインデックス)
CIは景気動向の大きさ(量感)を判断するための指標。
基準年を100とし、CIが上昇している場合は景気拡大、低下している場合は景気後退局面と判断する。
DI(ディフュージョンインデックス)
DIは景気の変化の方向性を判断するための指標。
3ヶ月前と比較して上昇している時は1、下落している時は0、横ばいの場合は0.5として計算。
50%以上の場合は景気拡大、50%未満の場合は景気後退局面と判断する
マネーストック統計
マネーストック統計は、日本銀行が毎月発表している、一般法人・個人・地方公共団体などの通貨保有主体が保有する通貨量の残高。景気が良い時はマネーストックは増加傾向となる
日銀短観(全国企業短期経済観測調査)
日本銀行が3、6、9、12月に年4回実施している、民間企業の景気感や経営状況を把握するためのアンケート調査。業種別に集計される。
業況が良いと答えた企業の割合から、悪いと答えた企業の割合を引いた数値を業況判断DIという。
50が横ばいを表し、これを上回ると「景気が良い」、下回ると「景気が悪い」と感じる企業が多いことを示す
業況DI = 良いと回答した割合 ー 悪いと回答した割合
物価指数
消費者物価指数(CPI)
消費者物価指数(CPI)は、総務省が毎月発表する。
一般世帯が購入するモノやサービスの価格(消費税込み)等を総合した物価変動を時系列に測定した指数
生鮮食料品・所得税などの税金、社会保険料、土地、有価証券は含まない
遅行指標の1つで、各種経済施策や公的年金の改定等に利用される
企業物価指数(CGPI)
企業物価指数(CGPI)は日本銀行が毎月発表する、企業間で取引される財の価格動向を示す指標
消費者物価指数より先行して変動する傾向があり、消費者物価指数より短期変動が大きい
完全失業率
完全失業率は、総務省が毎月発表する。
労働力人口(15歳以上の働く意欲のある人)のうち、完全失業者(職がなく、求職活動をしている人)が占める割合
有効求人倍率
有効求人倍率は、厚生労働省が毎月発表する。
有効求職者数に対する有効求人数の割合で、全国のハローワークの求職者数、求人数をもとに算出
試験対策としては、「どこが」「どのくらいの頻度で」発表するか覚えておきましょう
マーケット環境の理解(2)金融市場、金融政策
金融市場
金融市場とは、資金を貸し借りする市場のこと
満期までの期間が1年以内である市場を短期金融市場・1年を超える市場を長期金融市場と呼ぶ
- 短期金融市場
- インターバンク市場
金融機関だけが取引に参加。主な市場はコール市場(主に無担保コール翌日物が取引されている) - オープン市場
金融機関以外の一般企業も参加
- インターバンク市場
- 長期金融市場
日銀の金融政策
金融政策とは、日本銀行の行う金利政策のこと。物価の安定や持続的な経済成長などの観点から公開市場操作、貯金準備率操作などを行なっている
公開市場操作(オープン・マーケット・オペレーション)
現在の金融政策の最も代表的な手段が、公開市場操作になる。日銀が金融市場で債券などの売買を行うことで、民間金融機関の保有する資金の量を増減させ、金利などに影響を与える政策
景気を刺激したい場合は、金融緩和として買いオペ(資金供給)を行う。市場金利は低下
景気を抑制したい場合は、金融引き締めとして売りオペ(市場資金吸収)を行う。市場金利は上昇
買いオペ 日銀が国債等を購入する。市場にはお金が供給される
売りオペ 日銀が国債等を売却する。市場のお金が吸収される
買いオペは、日銀が国債の購入費用を払うので、市場から見るとお金の供給になります。売りはこの逆になります
貯金準備率操作
預金準備率を引き上げたり・引き下げたりすることで、金融機関の資金量を調整する政策
景気を刺激したい場合は、金融緩和として引き下げ
景気を抑制したい場合は、金融引き締めとして引き上げ
預金準備率は、「金融機関の預金残高のうち、中央銀行への預け入れを義務付けられている比率」です。準備率を引き上げると、金融機関の資金が日銀に吸い上げられるため、金融引き締めと同じ効果があります。
マーケット環境の理解(3)マーケット変動要因
マーケットの変動要因の関係一覧。金利・株価・債券などがどのような要因で上下するかを示している
景気と金利の関係
景気拡大↗️ 金利上昇↗️
景気後退↘️ 金利低下↘️
物価と金利の関係
物価上昇↗️ 金利上昇↗️
物価下落↘️ 金利低下↘️
為替と金利の関係
円高↗️ 金利低下↘️
円安↘️ 金利上昇↗️
景気と株価と債券価格の関係
景気拡大↗️ 株価上昇↗️
景気後退↘️ 株価下落↘️
景気拡大↗️ 債券価格下落↘️
景気後退↘️ 債券価格上昇↗️
金利と株価・債券価格の関係
一般的に、金利が上昇すると株や債券の魅力が下がるため株価や債券価格は下落する。
逆に金利が下がると株や債券の魅力が上がるので株価や債券価格は上昇する。
金利上昇↗️ 株価下落↘️
金利低下↘️ 株価上昇↗️
金利上昇↗️ 債券価格下落↘️
金利低下↘️ 債券価格上昇↗️