独学で学ぶFP2級|相続・事業承継(4)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 相続財産の評価(不動産以外)(1)金融資産
- 相続財産の評価(不動産以外)(2)自社株
相続財産の評価(不動産以外)(1)金融資産
上場株式等の評価
上場株式、ETFなどの上場投資信託、J-REIT(不動産投資信託)については、次の中から最も低い額を相続税の評価額とする
- 課税時期の終値(相続発生時の最終価格)
- 課税時期を含む月の当月の終値の平均
- 課税時期を含む月の前月の終値の平均
- 課税時期を含む月の前々月の終値の平均
たとえば、株価が以下のような場合、最も低い「課税時期を含む月の前月の終値の平均」の1,100円が1株あたりの相続税評価額になります。
課税時期の終値 | 1,200円 |
課税時期を含む月の当月の終値の平均 | 1,210円 |
課税時期を含む月の前月の終値の平均 | 1,100円 |
課税時期を含む月の前々月の終値の平均 | 1,150円 |
課税時期とは、相続人が亡くなった日のことです
ゴルフ会員権の評価
課税時期の通常取引価格×70% + 預託金(預託金がある場合)
預貯金の評価
預金残高+経過利子(源泉徴収後)
公社債の評価
利付債(上場債)
課税時期の最終価額+経過利子(源泉徴収後)
利付債(上場債以外)
発行価額+経過利子(源泉徴収後)
個人向け国債
課税時期の中途換金価額
投資信託の評価
原則、課税時期の基準価額
※解約手数料や信託財産留保額は差し引く
保険契約等の評価
生命保険契約
原則、課税時期の解約返戻金相当額
個人年金保険契約
保険金を支払う事由が発生していない場合は、課税時期の解約返戻金相当額
発生している場合は、次の3つのうち最も高い金額
①解約返戻金相当額、②一時金相当額、③予定利率をもとに算出した金額
相続財産の評価(不動産以外)(2)自社株
取引相場のない株式の評価(自社株の評価)
取引相場のない株式とは、全国の証券取引所に上場されていない株式のこと
取引相場のない株式については、相続や贈与などで株式を取得した者がその株式を発行した会社の経営支配力を持っている同族株主等の場合は原則的評価方式、それ以外の株主の場合は特例的な評価方式である配当還元方式により評価する
- 同族株主等(原則的評価方式)
以下のいずれか- 類似業種批准方式
- 純資産価額方式
- 類似業種批准方式と純資産価額方式の併用方式
- 上記以外(特例的評価方式)
- 配当還元方式
会社規模について
原則的評価方式では、会社の規模を総資産価額、従業員数および取引金額により大会社、中会社、小会社のいずれかに区分して、原則として、次のような方法で評価をする
大会社
類似業種批准方式と純資産価額方式の低い方
中会社
下記のうち低い方
・純資産価額方式
・類似業種批准方式×L + 純資産価額方式×(1ーL)
※Lは会社規模により0.6, 0.75, 0.9のいずれか
小会社
下記のうち低い方
・純資産価額方式
・類似業種批准方式×0.5 + 純資産価額方式×0.5
相続税の計算なので、低い方を選択した方が有利になります。なので低い方となります。
類似業種批准方式
類似業種批准方式は、事業が類似する上場会社の株価をベースにして(批准して)評価額を決める方式。「1株あたりの配当金額」「1株あたりの利益金額」「1株あたりの純資産価格」の3つ(批准要素)を使って補正することで評価額を決定する
$$
1株あたりの評価額=A*\frac{\frac{b}{B} +\frac{c}{C} + \frac{d}{D} }{3}\times 斟酌率 \times \frac{1株あたりの資本金額}{50円}
$$
以下の部分は、配当・利益・純資産のそれぞれの類似業種と評価対象の比を求めて平均していることになります。株価にこれをかけることで違い分を補正することができるという考え方だと思います。
$$
\frac{\frac{b}{B} +\frac{c}{C} + \frac{d}{D} }{3}
$$
株価 | 1株あたりの配当金額 | 1株あたりの利益金額 | 1株あたりの純資産価格 | |
類似業種の株価と批准要素 | A | B | C | D |
評価対象の会社 | b | c | d |
斟酌(しんしゃく)率は、会社の規模により以下のようになる
大会社 | 中会社 | 小会社 | |
斟酌率 | 0.7 | 0.6 | 0.5 |
純資産価額方式
会社を解散して会社の財産を処分した場合に、払い戻しされる金額が幾らかを計算し、それをもとに評価する方式
$$
1株あたりの評価額=\frac{(A-B) – ((A-B)-(C-D))\times 法人税等相当額}{発行済株式数}
$$
※法人税等相当額は37%
記号 | 記号の意味 |
A | 相続税評価額による総資産価額 |
B | 相続税評価額による負債額 |
C | 帳簿価額による総資産価額 |
D | 帳簿価額による負債額 |
配当還元方式
過去2年間の平均の配当金を割引率10%で割り戻して株価を計算する方法
- 「その株式の年配当金額」は、1株あたりの資本金の額を50円とした場合の金額で計算
- 平均額が2円50銭未満の場合は2円50銭とする
$$
1株あたりの評価額=\frac{その株式の年配当金額}{10\%}\times \frac{1株あたりの資本金額}{50円}
$$
前期配当金総額400万円、前々期配当金総額300万円、資本金額2,500万円、株式数5,000株、1株あたりの資本金1万円の場合、
$$配当額の平均=\frac{300万円+ 400万円}{2} = 350万円$$
$$その株式の年配当金額= \frac{350万円}{\frac{2,500万円}{50円}}=7円$$
$$
1株あたりの評価額=\frac{7}{10\%}\times \frac{1万円}{50円} = 14,000円
$$
併用方式
併用方式は、類似業種批准方式と純資産価額方式で算出した評価額と、加重平均して評価額を求める方式。主に、中会社の評価額の算出で利用する
特定評価会社
特定評価会社とは、不動産や株式などの特定の資産を多く保有している会社、開業前・開業直後といった一般的な経営活動を行なっていない会社のこと
このような会社の場合、会社の規模に関係なく純資産価額方式で評価する
- 土地保有特定会社
相続税評価ベースで、総資産に対する土地の割合が一定以上の会社- 大会社で70%以上、中会社で90%以上
- 株式保有特定会社
相続税評価ベースで、総資産に対する株式の割合が50%以上の会社 - その他の特定評価会社
- 開業後3年未満の会社等、類似業種批准方式の3要素が直前期ですべてゼロの会社
- 開業前、休業中、精算中の会社
特定評価会社は、資産管理会社などなので、類似業種批准方式で評価することが難しく、純資産価額で評価する方が適切なため、このようになっています。