独学で学ぶFP2級|不動産(1)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 不動産の見方(1)不動産登記
- 不動産の見方(2)不動産価格
不動産の見方(1)不動産登記
不動産登記とは
不動産登記とは、法務局(登記所)にある不動産登記記録に、不動産の現状や権利に関する記録を記載して、公示するもの
土地は1筆ごと、建物は1個ごとに記録される
登記記録には、表題部と権利部があり、権利部は甲区と乙区に別れる
- 表題部
土地・建物の概要を表示
土地:登記原因と日付、所在、地番、地積など
建物:登記原因と日付、所在、家屋番号、種類、構造、床面積など
表題の登記(表題登記)は義務で、所有権を取得してから1ヶ月以内の申請が必要 - 権利部
- 甲区
所有権に関する事項(所有権保存登記、仮登記、差し押えなど) - 乙区
所有権以外に関する事項(抵当権、地上権、賃借権など)
- 甲区
- 建物の床面積は、マンション(区分所有物)は区画の内側線で囲まれた水平投影面積(内法面積)となり、他は区画の中心線で囲まれた部分の水平投影機面積(壁芯面積)となる
- 登記の地番、家屋番号は、住居表示の表示と一致していないことがある
- 権利部には、登記義務がないため、登記がなくても権利が設定されていることがある
権利部の甲区は所有権などの権利、乙区は抵当権などの権利以外に関するものを記載するという部分は覚えておきましょう
登記の効力
不動産登記に公信力はないが、対抗力は認められている
公信力
公信力(こうしんりょく)とは、事実と異なる登記を信じて取引をした者が保護されること。不動産登記には公信力がないため、登記記録を信用して取引した者は保護されない
対抗力
対抗力は、登記されている自身の権利を第三者に主張できること。不動産登記は対抗力があるので、登記すれば自分の権利を主張することができる
公信力がないため、登記記録を信用して取引した人は保護されないという点は覚えておきましょう。また、対抗力があるので「権利の主張は可能」という点も併せて覚えましょう
不動産の登記
不動産の登記には、仮登記と本登記がある
仮登記
本登記を行うのに必要な書類等揃わないなど、何らかの理由で本登記ができない場合に、権利を得るための順位を確保(順位保全)するために行う登記。仮登記には、対抗力はないが、売主が二重譲渡をした場合などに、所有権を主張することができる。
本登記
本登記を行うことで、対抗力を得ることが可能となる
登記記録の閲覧
登記事項証明書
法務局が管理する不動産の登記記録に記録されている情報が記載された証明書。窓口、郵送、オンライン請求可能。受領は、窓口または郵送。
登記事項要約書
登記内容の要約を記載したもの。証明書としての効力はない。請求は窓口のみ。登記事項証明書より手数料が安い
登記記録は、法務局(登記所)で申請書に記入し手数料を支払うことで誰でも自由に請求することができる。
不動産登記以外の不動産関係の調査資料
地図(不動産登記法14条地図)
土地の面積や距離、形状、位置について正確性が高い地図。地図の作成は現在進行中で、全ての土地について存在しているわけではない。設置場所は登記所
公図
地図に準ずる図面で、地図と比べて制度が低い図面。設置場所は登記所
地積測量図
土地の測量図。全ての土地について存在しているわけではない。設置場所は登記所
固定資産課税台帳
固定資産評価額を含む土地の情報。所有者・借地人・借家人のみ閲覧可能。設置場所は市区両村役場
都市計画図
都市計画で定められた区域等の情報が表示された図面。設置場所は市区両村役場
公図は、大まかな土地の形状を表しているもので、現状とは大きく異なることもあります。
不動産の見方(2)不動産価格
不動産の価格
不動産の価格には、取引価格以外に、公示価格、基準地標準価格、相続税評価額(路線価)、固定資産税評価額という4種類の価格が存在する。
決定機関 | 評価の基準日 | 調査頻度 | 公表日 | 公示価格比 | |
公示価格 | 国土交通省 | 1月1日 | 毎年 | 3月下旬 | ー |
基準地標準価格 | 都道府県 | 7月1日 | 毎年 | 9月下旬 | 100% |
相続税評価額(路線価) | 国税庁 | 1月1日 | 毎年 | 7月下旬 | 80% |
固定資産税評価額 | 市区町村 | 1月1日 | 3年ごと | 4月初旬 | 70% |
- 基準地標準価格は、公示価格を補完するもの
- 相続税評価額は、路線価方式と倍率方式がある
不動産鑑定
原価法
原価法は、同じ建物を建てた場合の原価を計算して、その価格から経過年数に応じた減価修正を行ない価格を求める方法。この方法で試算された価格を、積算価格という
取引事例比較法
取引事例比較法は、対象物件と条件が近い類似物件をベースに、築年数、間取り、不動産市況などの事情などをかみして価格を求める方法。なお、類似物件については、投機的な物件など特殊なものは除外する。この方法で試算された価格を批準価格という
収益還元法
収益還元法は、不動産が将来生み出すであろう収益(賃貸収入など)を、現在価値として求める方法。大きく、2種類がある
直接還元法
不動産の純収益を還元利回りで割り戻して求める方法
現在価値 = (総収益ー必要経費)÷還元利回り
DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)
将来のキャッシュフロー(収入)を現在価値に割り戻して評価する方法
各期の純収益と、保有期間終了後(例えば10年後など)に得られる不動産の売却額(売却価格ー売却費用)を求め、それぞれ現在価値に割り戻して合計する方法。
DCF法は、さらにNPV法(正味現在価値法)とIRR法(内部収益率法)に分けられる
試験対策としては、CFP®の試験では、収益還元法の計算などがありましたが、2級ではそこまで複雑なのは出ない気がします。現在価値に直すということだけ理解しておきましょう。
10年後の100万円は、利息がつく前提だと、現在価値に直すと100万円以下になるという感覚を身につければ良いかと思います。