独学で学ぶFP2級|不動産(2)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 不動産の取引(1)売買契約
- 不動産の取引(2)借地・借家
不動産の取引(1)売買契約
宅地建物取引業法
宅地建物取引業とは
宅地建物取引業とは、以下の取引を生業として行うこと。宅地建物取引業法は、宅地・建物の取引について規定した法律で、宅地建物取引業を生業として行う場合、免許が必要となる
- 宅地・建物の売買や交換
- 宅地・建物の売買・交換・賃借の代理
- 宅地・建物の売買・交換・賃借の媒介(仲介)
宅地建物取引業者
宅地建物取引業者とは、いわゆる、不動産業者のこと
宅地建物取引業を行う場合は、免許が必要となる
また、事務所の5人に1人の割合で専任の宅地建物取引士(宅建士)を配置する必要がある。
以下は、宅地建物取引士の独占業務であり、宅地建物取引士(専任でなくても良い)以外が行うことはできない。なお、重要事項説明では、宅地建物取引士証の提示義務がある
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書(35条書面)への記名(サイン)
- 契約書(37条書面)への記名(サイン)
重要事項説明書(35条書面)、契約書(37条書面)の電磁的方法による交付も可能です(2022年5月施行の改正より)
媒介契約
宅地建物取引業者との媒介契約には、一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約の3種類がある。それぞれの違いは以下のとおり
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
依頼者への報告義務 | なし | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
他業者(複数業者)への依頼 | ⚪︎(できる) | ×(できない) | ×(できない) |
自己取引 | ⚪︎(できる) | ⚪︎(できる) | ×(できない) |
有効期間(契約期間) | なし | 3ヶ月以内 | 3ヶ月以内 |
指定流通機構(レインズ)への登録義務 | なし | 契約日の翌日から7日以内 | 契約日の翌日から5日以内 |
媒介契約とは、宅建業者に売買の仲介を依頼する契約です
報酬限度額(仲介手数料)
宅地建物取引業者が、媒介業務で受け取れる報酬(手数料)には、上限が設けられている
- 売買の媒介
- 200万円以下
取引価格×5% - 200万円超〜400万円以下
取引価格×4% + 2万円
- 400万円超
取引価格×3% + 6万円
- 200万円以下
- 貸借の媒介
- 借主・貸主双方からの報酬は、合計して借賃の1ヶ月分(+消費税)
- (専属)専任媒介契約で有効期間が3ヶ月を超える契約をした場合は、3ヶ月が契約期間となる
試験対策としては、宅地建物取引業法からは結構な頻度で出題があります。おさえておきましょう
売買契約の留意点
土地の面積
土地の面積は、登記面積と一致していないことがある。このため、後でトラブルにならないように契約時には公簿売買または、実測売買のどちらかが明記されることがある。
公簿売買
登記面積で売買する。実測面積との差異が生じても取引金額は変更しない
実測売買
実測面積で売買する。契約後に実測する場合は、登記面積(表示面積)と実測面積の差を精算する
建物の床面積
分譲マンションのパンフレットは壁芯面積で記載されているが、登記面積は内法面積のため、パンフレットの面積より小さくなる。なお、一戸建ては、登記面積は壁芯面積
手付金
手付金とは、買主から売主に支払われる価格で、代金の一部の相当
- 宅地建物取引業者が、自ら売主として売買契約をする場合は、売買代金の2割を超える手付金を受領することはできない
- 手付金には、解約手付、証約手付、違約手付の3つがあるが、宅地建物取引業者が売主となる取引では、どのような名目で手付金を受領しても解約手付の性質のものとなる
- 宅地建物取引業者が、自ら売主として売買契約をする場合の手付金は、契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄することで、売主の業者は手付金の倍額を提供することで契約を解除できる
- 原則、住宅ローンの申し込みは履行の着手にならない
契約不適合責任
契約不適合責任とは、売買契約において目的物に品質不良等の不備があった場合に、売主が買主に負う民法上の責任。2020年4月施行の改正民法により定められたもの(旧民法では、瑕疵担保責任と呼ばれていたもの)
契約に不適合があった場合、買主は以下の対応を売主に請求することができる
- 履行の追完
物件の補修や、代替物件を要求する権利 - 代金減額
代金の減額を請求する権利 - 損害賠償
損害賠償請求をできる権利(売主に責任がある場合に限る) - 契約解除
契約を解除する権利
- 不適合を知った日から1年以内に売主に通知しなければならない(売主が不適合について事前に知っていた場合は、1年を経過した後でも有効)
- 宅地建物取引業者が売主の場合は、契約不適合責任を免責する特約は無効
危険負担
危険負担とは、売買契約が成立した後に、債務者の責めに期すことができない事由で目的物が損失・毀損等してしまい履行不能になった場合に、リスクを誰が負担するかという問題のこと
より具体的には、建物が引き渡しまでの間に天災などの不可抗力で損壊した場合、買主は代金を支払わなければならないのかという問題
このような場合、改正民法では、買主は代金の支払いを拒否し、契約を解除できる
一口メモ:民法改正以前は、買主が代金を払うというのが民法での規定でした。このため、「天災などの場合(買主の責任でない場合)は、契約を解除できる」と契約書に記載されるのが一般的でした
不動産の広告表示
不動産の広告は、厳しいルールが設けられており、ルール違反をした場合は処分されてしまうこともある。以下、FP試験で見かける表示義務をピックアップした
- 特定事項の明示義務
一般消費者が通常予期することができない事項や、著しく不利な条件がある場合は、それを明示する義務(再建築不可など) - 各種施設までの距離または所要時間
徒歩の所要時間は、1分80メートルで換算して表示(1分未満の秒数は切り上げ表示)。例えば駅まで170メートルは、駅から3分となる。 - 新築表示
新築とは「建築後1年未満、誰も居住したことがない物件」であること - 建物価格表示
「消費税込み」の物件価格の表示 - 取引形態
「売主」「貸主」「代理」「媒介(仲介)」のどれに該当するかを明確に表示
マンションの場合
- パンフレット記載は、壁芯面積
- バルコニーは共有部分(専有面積に含まれない)
クーリング・オフ
宅地建物取引業者が売主の場合、一定の条件を満たせばクーリング・オフを行うことができる
- クーリングオフに関する書類を受け取ってから8日を経過
- 買主が宅建業者の事務所で契約を行った場合
- 買主が宅建業者の場合
- 物件の引き渡しが完了し、代金を支払った場合(売買が完了している場合)
不動産の取引(2)借地・借家
借地借家法
借地借家法は、土地と建物の賃貸借について定められた法律。基本は、借り手の保護を目的としている。
土地の借地権と、建物の借家権があり、それぞれ普通と定期がある
土地(借地)と建物(建物)、普通と定期があることを覚えておきましょう。例えば、土地+定期だと定期借地権となります。
借地権
普通借地権(普通借地契約)
普通借地権では、借り手の権利が強く守られるため、地主(土地のオーナー)から契約を解除するのが困難。このため、現在は、定期借地権での契約が多い。
- 存続期間
30年以上(期間を定めない場合や、30年より短めの設定をした場合も30年) - 利用目的
制限なし - 契約書式
制限なし(口頭でも可能で、書面の必要もない) - 更新
最初の更新の場合、契約期間は20年以上、2回目以降は10年以上
期間満了時に建物がある場合は、原則、どういうつ条件で更新される - 中途解約
できない(特約があれば可能) - メモ
更新がない場合は、地主に対して建物の買取を請求することができる(建物買取請求権)
定期借地権(定期借地契約)
定期借地権には、一般的借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権の3種類がある
定期借地権は、定められた期間で借地契約が終了するため(契約の更新がない)、貸した土地はオーナーに戻ってきます。
一般的借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | 事業用定期借地権 | |
存続期間 | 50年以上 | 30年以上 | 10年以上50年未満 |
利用目的 | 制限なし | 制限なし | 事業用建物 |
契約書式 | 公正証書等の書面 | 制限なし | 公正証書 |
返還時 | 原則、更地で返還 | 建物を譲渡し、土地を返還 | 原則、更地で返還 |
その他事項 | 建物買取請求権がない | 建物は地主が買取る | 建物買取請求権がない |
借家権
普通借家権(普通借家権)
- 存続期間
期間は1年以上。1年未満の契約をした場合は、期間の定めのない契約となる - 契約書式
制限なし(口頭でも可能で、書面の必要もない) - 更新
賃貸人(オーナー)に正当な理由がなければ、同一条件で自動更新 - 中途解約
・賃貸人からの契約解除の場合は、契約終了の1年から6ヶ月前までに正当な拒絶理由を通知する必要がある
・賃借人は3ヶ月前までに申し入れすればよい(正当な理由は不要) - メモ
- 賃料の増減請求は、賃貸人、賃借人のどちらからも可能。
- 賃借人には、契約期間満了時に賃貸人の同意を得て取り付けたエアコンなどを時価で買い取ってもらうことを請求する権利(造作買取請求権)がある
定期借家権(定期借家権)
- 存続期間
制限なし(1年未満も可能) - 契約書式
公正証書等の書面(公正証書でなくても良い) - 更新
更新はなし - 中途解約
・原則、中途解約は不可能。床面積が200㎡未満の居住用に限り、やむを得ない理由(転勤など)であれば1ヶ月前までに通知することで中途解約可能 - メモ
- 用途に制限はなく事業用も可能
- 契約満了の1年から6ヶ月前までに、賃貸人(オーナー)は賃借人に終了の通知をする必要がある。通知を怠った場合は、通知後6ヶ月間はそのまま住み続けることが可能(1年未満の契約の場合は不要)
借地借家法のポイント
- 普通借家契約では、契約期間は1年以上。それより短い期間の契約をした場合は期間の定めがない契約とみなされる
- 借家契約では、建物の引き渡しを受けていれば、貸借権の登記をしていなくても貸借権を主張することができる
- 定期借家契約を締結する場合は、あらかじめ、契約の更新がない旨を記載した書面を交付して説明する必要がある
- 普通借地権の存続期間満了時に借主から契約の更新の請求があった場合、借地上に建物があれば同条件で契約を更新したとみなされる(建物があることが条件)
試験対策としては、公正証書が必要なのは事業用定期借地権だけです。あとは、公正証書等の書面となっていて書面であれば公正証書でなくても良いです。