独学で学ぶFP2級|金融資産運用編(4)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 株式投資(1)基礎知識
- 株式投資(2)投資判断の尺度
- 外貨建商品
株式投資(1)基礎知識
株式とは
株式とは
株式とは、企業の所有権を分割した一部を示す証券
投資家は株式を購入し、その企業の共同所有者となることができる
企業の業績が良ければ株価は上昇し、利益を得ることができる
逆に業績が悪化すれば株価は下落し、損失を被る可能性がある
株式購入することで、出資者として会社の共同経営者になるということを理解しておきましょう
株主の権利
株主の権利には以下のようなものがある
自益権 | 剰余金配当請求権 配当を受け取る権利 残余財産分配請求権 会社解散時に、残った財債の分配を受ける権利 株式買取請求権 自分の持つ株式を買い取ってもらう権利 |
共益権 | 決議権(経営参加権) 会社の決議に参加する権利 |
東京証券取引所の市場区分
プライム市場
多くの機関投資家の投資対象になりうる規模の時価総額(流動性)を持ち、より高いガバナンス水準を備え、投資者との建設的な対話を中心に据えて持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
スタンダード市場
公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えつつ、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上にコミットする企業向けの市場
グロース市場
高い成長可能性を実現するための事業計画及びその進捗の適時・適切な開示が行われ一定の市場評価が得られる一方、事業実績の観点から相対的にリスクが高い企業向けの市場
日本の株価指数
日経平均株価(日経225)
日経平均株価は、東証プライム市場上場銘柄の中の代表的な225銘柄の株価の平均(修正平均株価)。株価の平均のため、値がさ株(株価の高い銘柄)の影響を受けやすい。
対象となる225銘柄は定期的に入れ替えられる
東証株価指数(TOPIX)
元々は、東証に上場する全銘柄を対象として、各銘柄の浮動株数に基づく時価総額を合計し、基準日の時価総額(基準時価総額)を100として算出した指標
現在は、流通株式時価総額100億円以上ある全銘柄の時価総額を「基準時価総額」と比較して何倍になっているかを示す時価総額加重平均株価指数
TOPIXは時価総額の大きな銘柄の影響を受けやすい
JPX日経インデックス400
東証プライム市場・スタンダード市場・グロース市場から自己資本利益率(ROE)等の条件で絞り込んだ400銘柄を元に算出される指標(基準時価総額を100,000ポイントとして計算される時価総額加重平均株価指数)
株式の売買
株式の売買は単元株が基本だが、株式ミニ投資や株式累積投資(るいとう)といったものもある
単元株
取引の売買単位となる株数を単元株と言い、現在は100株単位で統一されている
株式ミニ投資
通常は単元でしか購入できない株式を、10分の1の10株単位で購入することが可能な取引のこと
株式累積投資(るいとう)
同一銘柄の株を、毎月一定金額(月々1万円以上1,000円単位、上限100万円未満)ずつ購入していく制度
株式の注文方法
証券取引所での取引では、「オークション方式」による売買が行われいる。オークション方式では、公正な取引のために価格優先の原則と時間優先の原則に基づいて売買が行われる
価格優先の原則
売り注文の場合は「最も低い価格」が優先
買い注文の場合は「最も高い価格」が優先され、取引が成立すること
時間優先の原則
同じ価格の注文が複数ある場合は、注文時間が早いものから優先して取引が成立すること
また、株式の注文方法には、成行注文と指値注文がある
成行注文
売値や買値を指定せずに注文を出す方法。価格に関係なく「確実に買いたい(売りたい)」場合などに利用される
指値注文
売買する価格を指定して注文を出す方法。「ある価格以下なら買いたい」場合などに利用する
売買が成立した場合、代金受け渡しは約定(売買成立日)から起算して3営業日目となる
試験対策としては、用語を見ればその意味がわかる感じなので、言葉の意味を理解しておきましょう
現物取引
現物取引とは、株式と売買代金(現金)を受け渡すことで成立する取引
現物取引では、現金(自己資金)で株を購入する、保守している株を売却することのみ可能
信用取引
証券会社に取引の30%以上の委託補償金を差し入れ、買付に必要な資金や株式を証券会社から借りて株の売買を行う取引。委託補償金は、国債や上場株式などの有価証券でも可
株式を借りることで、保有していない株を売却することができる(空売り)
少ない手元資金で大きな取引なためレバレッジ効果が期待でき、大きなリターンが期待できる反面、損失も大きくなる
信用取引には、制度信用取引と一般信用取引の2つが存在
制度信用取引
証券取引所が定めた制度に従って行う信用取引のこと。取引できる銘柄は証券取引所が選定。弁済期限は最長6か月
一般信用取引
証券会社と顧客間で行う信用取引。取引銘柄は上場銘柄から証券会社が自由に選択する。返済期限は証券会社により異なり、無期限の場合もある
配当金
配当金領収証方式
郵送されてきた「配当金受領証」を金融機関または郵便局の窓口に持参し、それと引き換えに配当金を受け取る方式
登録配当金受領口座方式
複数の証券会社に口座があった場合も、指定した1つの金融機関の口座に全ての株式の配当金が振り込まれる方式
株式数比例配分方式
配当金がそれぞれの証券会社の口座に入金される方式。同一銘柄を複数の証券会社で保有している場合、それぞれの証券会社の株式保有数に応じて比例配分され、配当金が入金される
個別銘柄指定方式
銘柄ごとに配当を受け取る口座を指定し、金融機関の口座への振り込みで配当金を受け取る方式
配当金の受取方法は、証券会社ごとに変更できない。最後に証券会社で選択した受領方式が全ての証券会社に保有する証券口座に適用される(選択した方式は、保管振替機構(ほふり)を通じて他の証券会社にも通知)
試験対策として、受取方法は証券会社ごとに変更できない点は覚えておきましょう
株式投資(2)投資判断の尺度
株式投資の判断基準となる主な指標には以下のものがある
株価収益率(PER, Price Earning Ratio)
1株あたり純利益の何倍で取引されているかの指標。一般的に上場企業の場合は15倍が目安と言われる。高ければ割高、安ければ割安となる
$\begin{eqnarray}
株価収益率(PER) = \frac{株価}{1株あたりの当期純利益(EPS)}
\end{eqnarray}$
$\begin{eqnarray}
当期純利益 (EPS)= \frac{当期純利益(税引き後)}{発行済株式数}
\end{eqnarray}$
株価純資産倍率(PBR, Price Book-value Ratio)
1株あたり純資産の何倍で取引されているかの指標。純資産は解散価値であり、PBRが1.0を切ると会社がなんらかの理由で解散した場合でも、株式の価値以上の分配金が得られることになります
PBRは、1以下の場合は割安、1を超える場合には割高となります
$\begin{eqnarray}
株価純資産倍率(PBR) = \frac{株価}{1株あたりの純資産}
\end{eqnarray}$
$\begin{eqnarray}
1株あたりの純資産 = \frac{純資産}{発行済株式数}
\end{eqnarray}$
自己資本比率(ROE, Return of Equity)
自己資本比率とは、返済不要の自己資本が資産全体の何%かを示す数値。自己資本比率が小さいほど、負債(他人資本)が多いことを示し、会社の独立性に不安が生じる
自己資本比率が高いほど倒産しにくいと考えることができ、会社経営の安定性を示す指標となる
$\begin{eqnarray}
自己資本比率(ROE) = \frac{自己資本}{総資本}
\end{eqnarray}$
配当利回り
株価に対する年間配当金の割合を示す数値。株式投資の利回り計算の指標となる
$\begin{eqnarray}
配当利回り = \frac{1株あたりの年間配当金}{株価}\times 100
\end{eqnarray}$
配当性向
当期純利益のうち、どれくらいの割合を配当金として株主に還元しているかを示す数値
$\begin{eqnarray}
配当性向= \frac{年間配当金総額}{当期純利益}\times 100
\end{eqnarray}$
外貨建商品
為替レート(TTS, TTB, TTM)
外貨建て商品の場合、円を外貨に・外貨を円に換える必要がある。円→外貨、外貨→円の交換には為替レートが決められており、対顧客為替レート(TTS、TTB)と仲根(TTM)がある。
TTS(Telegraphic Transfer Selling rate)
顧客が円を売って外貨を買う際のレート(円→外貨)
TTB(Telegraphic Transfer Buying rate)
顧客が外貨を売って円を買う際のレート(外貨→円)
TTM(Telegraphic Transfer Middle rate)
TTSやTTBの基準となる値で、各金融機関がそれぞれ任意に設定する
試験対策としては、円を売る(sell)がTTS、円を買う(buy)がTTBと覚えましょう
外国証券取引口座
外国証券取引を行う際には外国証券取引口座を開設する必要がある
外貨(定期)預金
金利
海外金利をもとに決定するが、金融機関により異なる
為替手数料
円→外貨、外貨→円の往復でそれぞれかかる(手数料は金融機関で異なる)
預金保険制度
対象外
中途解約
できない場合やペナルティを伴うことが多い
外貨建てMMF
収益分配
運用実績に応じて分配(実績分配)
為替手数料
円→外貨、外貨→円の往復でそれぞれかかる(一般的に外貨預金と比べて低い)
補償制度
投資者保護基金の補償対象
税金
収益分配金、売却益ともに20.315%の申告分離課税
外国債券
外国債券とは、発行者、通貨、発行場所のいずれかが海外である債券のこと。外国債券には以下のようなものがある
払込金(購入) | 利払い | 償還金 | |
円建外債(サムライ債) | 円貨 | 円貨 | 円貨 |
外貨建外債(ショーグン債) | 外貨 | 外貨 | 外貨 |
デュアルカレンシー債 | 円貨 | 円貨 | 外貨 |
リバース・デュアルカレンシー債 | 円貨 | 外貨 | 円貨 |
外国株式
外国株式の取引方法には、次の3種類がある
国内委託取引
国内の証券取引所に上場されている外国株式を売買する取引方法
国内店頭取引
投資家と証券会社が(取引所を通さずに)直接売買する取引方法
外国取引
証券会社を通じて、海外の取引所に注文を取りついでもらう取引方法
試験対策としては、外貨建て商品は毎年1問程度出題されているようです。範囲はそれほど広くないので、おおまかに全体を理解するようにしましょう