独学で学ぶFP2級|ライフプランニングと資金計画編(4)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 公的年金
公的年金の概要
公的年金の概要
公的年金は、国民年金(基礎年金)と、厚生年金保険の二階建て構造。
また、上の図には無いが、企業年金や確定拠出年金などの私的年金が3階部分となる。
賦課方式
日本の公的年金は、現役世代が保険料を払い、年金受給者に支給する「世帯間扶養方式(賦課方式)」
年金の給付の種類
- 老齢給付
- 年齢が達した時に給付
- 国民年金では老齢基礎年金・付加年金
- 厚生年金保険では老齢厚生年金。
- 障害給付
- 一定の障害の状態になったときに給付
- 国民年金では障害基礎年金
- 厚生年金保険では障害厚生年金・障害手当金
- 遺族給付
- 被保険者が亡くなった時に遺族に給付
- 国民年金では遺族基礎年金・寡婦年金・死亡一時金
- 厚生年金保険では遺族厚生年金
国民年金保険
被保険者
国民皆年金制度であり、日本国内に住所のある20歳以上60歳未満のすべての人が対象
被保険者は、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者に分けられる。
- 第1号被保険者
20歳以上60歳未満で、第2号被保険者、第3号被保険者でない人。具体的には、自営業者とその配偶者、学生など - 第2号被保険者
民間企業の会社員や公務員、私立学校の教職員などで厚生年金、共済の加入者 - 第3号被保険者
第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(専業主婦・主夫などで年収130万未満)
試験対策としては、第1号被保険者、第2号被保険者、第3号被保険者の違いを覚えておきましょう。
このほかに任意加入制度がある
- 任意加入被保険者
60歳以上65歳未満の人。受給要件を満たして以内場合は70歳まで加入可能。
任意加入制度は、40年の納付期間がなく満額受給できない場合などで年金の増額をしたい場合に加入します
保険料
保険料は1ヶ月あたり16,980円(令和6年度)。第2号被保険者は厚生年金の保険料を納めていれば、国民年金の保険料を納める必要はなし。第3号被保険者の保険料は第2号被保険者の保険料に含まれているため、別途納める必要はない。
保険料の納付
翌月末までに保険料を納付。前納(6ヶ月、1年、2年)や口座振替で割引を受けることができる。
未納の保険料は原則2年間さかのぼって追納できる。
保険料の免除と猶予制度
所得が少ないなど、保険料を納めることが困難な場合には「国民年金保険料免除・納付猶予制度」がある。
免除の要件としては、法定免除と申請免除がある。法定免除は、障害年金の受給権者(障害等級1級または2級)、生活保護を受けている者が該当。申請免除は、前年の所得水準(配偶者または世帯主の所得)に応じて保険料が免除される制度。
免除には、全額免除・4分の3免除・半額免除・4分の1免除の4つがある。
また、免除・猶予された保険料は10年前までさかのぼって追納することが可能。
免除・猶予された期間については、老齢年金の基礎額を計算するときに以下の割合で反映される
平成21年3月まで | 平成21年4月以降 | |
全額免除 | 2/6 | 4/8 |
4分の3免除 | 3/6 | 5/8 |
半額免除 | 4/6 | 6/8 |
4分の1免除 | 5/6 | 7/8 |
納付猶予制度 | なし(受給資格期間としてはカウントされる) |
免除は一定割合が年金の給付額に反映され、猶予は期間のみカウントされるという違いを覚えておきましょう
産前産後の保険料免除制度
国民年金の第一号被保険者が出産する場合、出産予定日の前月から4ヶ月間について保険料が免除。この期間は、保険料納付済み期間となり、年金額は減額されない
学生納付特例制度
学生本人の前年の所得が所定の額以下の場合、納付を猶予。受給資格期間には反映されるが、追納しなければ年金額への反映はなし
保険料納付猶予制度
50歳未満の本人及び配偶者の前年の所得が所定の額以下の場合、納付を猶予。受給資格期間には反映されるが、追納しなければ年金額への反映はなし
厚生年金保険
被保険者
厚生年金の適用事業場所(常時5人以上の従業者を使用している事業所)に勤める70歳未満の者は強制加入
保険料
現在は、18.3%で固定されており、保険料は労使折半で負担。保険料の基準となるのは、標準報酬月額と標準賞与額で、これに保険料率を乗じて算出される。
試験対策としては、18.3%と労使折半は覚えておきましょう。
保険料の種類 | 保険料額の計算方法 |
---|---|
毎月の保険料額 | 標準報酬月額 × 保険料率 |
賞与の保険料額 | 標準賞与額 × 保険料率 |
標準月額報酬は32等級に区分されている。標準賞与額は、実際の税引き前賞与額から1,000円未満を切り捨てたもので、は年3回までの賞与支給が対象(支給1回につき150万が上限)。
健康保険は50等級なので違いに注意しましょう。
産前産後休業期間中と育児休業期間中は、事業者が申し出ることで被保険者負担分・事業主負担分の両方とも免除されます。この期間は、保険料納付済期間として取り扱われる
老齢給付
老齢基礎給付(国民年金保険)
受給要件
- 65歳になっていること
- 受給資格期間(納付期間+免除期間+合算期間)が10年以上あること
※合算期間(カラ期間)は、1991年3月までに20歳以上の学生であったもので国民年金に任意加入していなかった期間など
年金額
納付期間が40年(480ヶ月)を満たしていれば、満額受給となる
満額は新規裁定者(67歳以下)と、既裁定者(68歳以上)で異なり、令和5年度は以下の通り
対象者 | 満額(年額) |
新規裁定者 | 816,000円 |
既裁定者 | 813,700円 |
実際には、老齢基礎年金は以下の計算式で計算される
$$
年金額=年金満額\times\frac{納付期間の月数+A+B+C+D}{480月}
$$
$$\begin{eqnarray}
A&=&保険料全額免除期間*全額免除の反映割合\\
B&=&4分の3免除期間*4分の3免除免除の反映割合\\
C&=&半額免除期間*半額免除の反映割合\\
D&=&4分の1免除期間*4分の1免除免除の反映割合
\end{eqnarray}$$
免除の反映割合は、先に書いた表の割合が入る。なお、「平成21年3月まで」と「平成21年4月以降」の期間それぞれ反映割合が異なる。
試験対策としては、満額はちゃんと確認しましょう。満額は変わっているので古い参考書を使う場合は注意です
40年(480ヶ月)は覚えておきましょう。
繰上げ・繰下げ支給
老齢基礎年金の受給は原則65歳からですが、60歳〜64歳に繰上げる、もしく66歳〜75歳に繰り下げることができます。繰上げた場合は減額になり、繰下げた場合は増額になる
- 繰上げ受給(60歳〜64歳)
- 年金額は繰上げた月あたり0.4%減額↓
- 繰り下げすると一生涯、減額された額となる(取り消し・変更不可)
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げる必要がある
- 付加年金も同時に繰上げとなり、減額される
- 65歳前に障害等級に該当する障害者になっても、障害基礎年金が受給できなくなる
- 遺族年金の受給者になっても、65歳まではどちらか一方のみ選択となる
- 繰下げ受給(66歳〜75歳)
- 年金額は繰下げた月あたり0.7%増額↑
- 繰り下げの申し出は66歳到達日以降
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は個別に繰り下げることができる
- 付加年金も同時に繰下げとなり、増額される
試験対策としては、0.4%, 0.7%と、繰上げは老齢基礎年金と老齢構成年金を同時に、繰下げは個別というところです。
付加年金
第1号被保険者または65歳未満の任意加入被保険者を対象にした制度で、将来の老齢基礎年金の額を増やすことができる。
- 国民年金保険の納付を免除されている場合は加入不可
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)と同時に加入可能
保険料は月額400円。老齢基礎年金への加算額は200円×付加保険料を納めた月数で計算
(2年以上受け取ると、納めた付加保険料以上の年金を受け取れる計算になる)
老齢厚生年金(厚生年金保険)
受給要件
厚生年金の被保険者期間がある場合、原則として65歳になると老齢厚生年金が支給される。
なお、年金受取が60歳から65歳に変更された時に、移行のために段階的な受給年齢の引き上げが行われた。この60歳から65歳に達するまでの期間に受給されるのが、「特別支給の老齢厚生年金」となる。特別支給の老齢厚生年金は、生年月日により受給開始が異なる。
特別支給の老齢厚生年金
特別支給の老齢厚生年金には、「報酬比例部分」と「定額部分」がある。生年月日と、それぞれの受給開始年度は以下の通り。
試験対策としては、男性で昭和36年、女性で昭和41年生まれで廃止されるという部分です。
特別支給の老齢厚生年金の受給額は以下の計算
年金額=報酬比例部分+定額部分+(加給年金)
定額部分=1,657円×生年月日に応じた乗率×被保険者期間の月数(上限480月)
加給年金
以下の条件を満たす場合に支給
- 厚生年金の被保険者期間が20年以上
- 定額部分の支給がある場合はその年齢から、他は65歳から加算
- 65歳未満の配偶者または子がいる
- 配偶者や子の年収が850万以上にならない
金額は以下の通り
対象者 | 加給年金額 |
配偶者 | 234,800円 |
1人目・2人目の子 | 各234,800円 |
3人目以降の子 | 各78,300円 |
老齢厚生年金(65歳以後)
65歳以後の老齢厚生年金の額の計算は、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分の計算と同じ。
特別支給の定額部分がなくなり、かわりに老齢基礎年金が支給されるため、年金額は以下のようになる。
$$年金額=老齢基礎年金+老齢厚生年金+(経過的加算)+(加給年金)$$
老齢厚生年金の計算は、特別支給の老齢厚生年金の報酬比例分と同じ。
報酬比例分の計算式
報酬比例部分 = A + B
平成15年3月以前の加入期間
$A = 平均標準報酬月額*\frac{7.125}{1000}*平成15年3月までの加入期間$
平成15年4月以降の加入期間
$B = 平均標準報酬月額*\frac{5.481}{1000}*平成15年4月以降の加入期間$
試験対策として、報酬比例の計算式の$\frac{7.125}{1000}$, $\frac{5.481}{1000}$は特に覚える必要はなし。
経過的加算
「65歳からの老齢基礎年金 < 特別支給の老齢厚生年金の定額部分」の時に差額を支給するもの。
$$経過的加算の額=特別支給の老齢厚生年金の定額部分-老齢基礎年金$$
振替加算
夫(妻)が受けている老齢厚生年金に加算されている加給年金額の対象者になっている妻(夫)が65歳になると、それまで夫(妻)に支給されていた加給年金額が打ち切られる。このとき妻(夫)に老齢基礎年金が支給される場合に、一定の基準により妻(夫)自身の老齢基礎年金の額に加算がされる。これを振替加算という。
繰上げ・繰下げ支給
老齢厚生年金の受給も原則65歳からですが、60歳〜64歳に繰上げる、もしく66歳〜75歳に繰り下げることができます。繰上げた場合は減額になり、繰下げた場合は増額になる
- 繰上げ受給(60歳〜64歳)
- 年金額は繰上げた月あたり0.4%減額↓(最大24%減額)
- 繰り下げすると一生涯、減額された額となる(取り消し・変更不可)
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰上げる必要がある
- 加給年金は同時に繰り上がらない
- 繰下げ受給(66歳〜75歳)
- 年金額は繰下げた月あたり0.7%増額↑(最大84%増額)
- 繰り下げの申し出は66歳到達日以降
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金は個別に繰り下げることができる
在職老齢年金
60歳以降に在職(厚生年金に加入)しながら受ける老齢厚生年金を在職老齢年金という。
賃金と年金額に応じて年金の一部が支給停止になる。
- 賃金と年金額の合計額が50万円以下の場合は、全額が支払われる
- 48万円を超えた場合、超えた額の半額が支給停止となる
離婚時の年金分割制度
- 合意分割
2007年4月から導入されている制度。夫婦で合意または家庭裁判所の決定により、夫婦合算した厚生年金の納付記録の半分までを多い方から少ない方へ分割できる。離婚の翌日から2年以内に年金事務所へ請求する必要がある。 - 3号分割
2008年4月以降の年金積立分から適用される制度。相手の了承なしに2分の1を分割請求できる。離婚の翌日から2年以内に年金事務所へ請求する必要がある。
試験対策としては、合意あり・なしを覚えることです。
障害給付
障害基礎年金(国民年金保険)
国民年金加入者が一定の障害状態になった時に支給される年金。
受給要件
- 障害認定日に障害等級1級または2級に該当
- 障害の原因となった疾病の初診日が国民年金加入期間、または、20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間である
- 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、保険料納付済期間(免除期間を含む)が3分の2以上ある
20未満で障害のある状態にある場合は、原則20歳からの支給
年金額
2級
67歳以下の方 (昭和31年4月2日以後生まれ) | 816,000円 + 子の加算額 |
---|---|
68歳以上の方 (昭和31年4月1日以前生まれ) | 813,700円 + 子の加算額 |
1級
67歳以下の方 (昭和31年4月2日以後生まれ) | 2級の額の1.25倍 + 子の加算額 |
---|---|
68歳以上の方 (昭和31年4月1日以前生まれ) | 2級の額の1.25倍 + 子の加算額 |
子の加算額
2人まで | 1人につき 234,800円 |
---|---|
3人目以降 | 1人につき 78,300円 |
障害厚生年金(厚生年金保険)
厚生年金加入者が一定の障害状態になった時に支給される年金
受給要件
- 障害認定日に障害等級1級または2級または3級該当
- 障害の原因となった疾病の初診日が厚生年金加入期間である
- 障害基礎年金の受給要件をみたいしていること
試験対策としては、障害基礎年金と異なり、3級も対象だということろは覚えておきましょう
年金額
障害等級3級 | 報酬比例分のみ |
障害等級2級 | 報酬比例分+配偶者の加給年金額 |
障害等級1級 | 報酬比例分×1.25倍+配偶者の加給年金額 |
その他
- 障害の状態が3級より軽いが一定の障害に該当する場合は、障害手当金を支給
遺族給付
遺族基礎年金(国民年金保険)
遺族基礎年金は、国民年金加入者が亡くなった場合に、子のある配偶者、または、子のどちらかに支給される年金
受給要件
以下の1から4のいずれかの要件を満たしている方が死亡した時
- 国民年金の被保険者
- 国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の方で、日本国内に住所を有していた
- 老齢基礎年金の受給資格者
- 老齢基礎年金の受給資格を満たしていた
1と2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上あることが必要。ただし、死亡日が令和8年3月末日までは、死亡した者が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の滞納がなければ良い
3と4の要件については、保険料納付済期間(免除期間および合算期間を含む)が25年以上あることが必要
受給対象者
死亡した者に生計を維持されていた「子のある配偶者」または「子」
生計を維持されているとは、原則、次の要件を満たす場合をいう
- 生計を同じくしている
- 前年の年収が850万円未満であること
条件を満たす配偶者と子がいる場合は、配偶者に支給が行われる
年金額
配偶者が受け取るとき
67歳以下の方 (昭和31年4月2日以後生まれ) | 816,000円 + 子の加算額 |
---|---|
68歳以上の方 (昭和31年4月1日以前生まれ) | 813,700円 + 子の加算額 |
子の加算額
- 1人目および2人目の子の加算額 各234,800円
- 3人目以降の子の加算額 各78,300円
子が受け取るとき
次の額を子の数で割った額が1人あたりの額となる
816,000円+2人目以降の子の加算額
試験対策としては、老齢基礎年金額の満額が2つに分かれたせいで、すこし複雑になっていますが、ここが出題されるかどうかは微妙だと思っています
寡婦年金(国民健康保険)
国民年金の第1号被保険者として保険料を納めた期間と保険料免除期間が10年以上ある夫が亡くなった時に、死亡当時に生計を維持されていた妻に対して60歳〜65歳になるまでの間支給される。
- 年金額は、夫の被保険者期間から計算した老齢基礎年金の4分の3
- 亡くなった夫が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けたことがある場合は支給なし
- 妻が繰上げ支給の老齢基礎年金を受けている場合も支給なし
死亡一時金(国民健康保険)
死亡日の前日において、第1号被保険者として保険料を納めた月数が36月以上(3年以上)ある者が、老齢基礎年金・障害基礎年金を受けないまま死亡した場合、生計を同じくしていた遺族(配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の中で優先順位の高い者)に支給される
- 保険料を納めた月数に応じて、12万円〜32万円
- 付加保険料を納めた月数が36月以上ある場合は、8,500円が加算
- 遺族基礎年金が支給される時には支給されない
- 寡婦年金とはどちらか一方を選択
- 2年以内に請求しない場合は権利の時効
遺族厚生年金(厚生年金保険)
遺族構成年金は、厚生年金保険の加入者が亡くなった場合に、遺族に支給される年金
受給要件
次のいずれかの要件を満たしている者が死亡した場合に支給
- 厚生年金保険の被保険者である間に死亡
- 厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気や怪我が原因で初診日から5年以内に死亡
- 1級・2級の障害厚生年金を受け取っている者が死亡
- 老齢厚生年金の受給権者であった者が死亡
- 老齢厚生年金の受給資格を満たした方が死亡
1と2の要件については、死亡日の前日において、保険料納付済期間(免除期間含む)が3分の2以上あることが必要(ただし、死亡日が令和8年3月末日までは、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと)
4と5の要件については、保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間を合計した期間が25年以上であることが必要
受給対象者
受給対象者と優先順位は以下の通り
- 配偶者(子のいない30歳未満の妻は5年間のみ支給。夫の場合は55歳以上)
- 子(18歳になった年度の3月末日まで、障害者は20歳未満)
- 父母(55歳以上)
- 孫(18歳になった年度の3月末日まで、障害者は20歳未満)
- 祖父母(55歳以上)
年金額
遺族厚生年金の年金額は、死亡した者の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3
試験対策として、国民年金保険と厚生年金保険で異なる遺族年金の受給対象者は覚えましょう。
中高齢寡婦加算(厚生年金保険)
中高齢寡婦加算は、遺族基礎年金が受給されていない「子のいない妻」の救済のための制度。
支給条件は以下の通り。
- 子がいない妻で、夫が亡くなった時に40歳以上65歳未満の妻
- 子がいる妻で、子が18歳になった年度の3月を過ぎたため遺族基礎年金を受給できなくなった40歳以上65歳未満の妻
遺族構成年金に40歳から65歳になるまでの間、中高齢寡婦加算が上乗せされる。
経過的寡婦加算(厚生年金保険)
65歳になり中高齢寡婦加算を受給できなくなった場合の年金水準を維持するための制度。
- 昭和31年4月1日以前生まれの妻に65歳以上で遺族厚生年金の受給権が発生した
- 中高齢の加算がされていた昭和31年4月1日以前生まれの遺族厚生年金の受給権者である妻が65歳に達した
経過的なものであり、この制度はいずれなくなる
試験対策としては、中高齢者寡婦加算や経過的寡婦加算は、支給される年金額の水準を維持するために設けられた制度であることを覚えておきます。
公的年金の併給調整
公的年金の併給とは
公的年金では、老齢・障害・遺族年金の異なる2つの受給要件を満たした場合には、原則として、どれか1つを選択する必要がある
同じ組み合わせの例
- 老齢基礎年金と老齢厚生年金
- 障害基礎年金と障害厚生年金
- 遺族基礎年金と遺族厚生年金
異なる支給事由の例
異なる支給事由の年金を受けられる場合は、いずれか1つを選択することになる。
例えば、障害と老齢の2つが受けられる場合は、障害基礎年金と障害厚生年金か、老齢基礎年金と老齢構成年金のいずれかを選択することになる。
ただし、以下のような併給は可能
- 障害基礎年金と老齢厚生年金
- 障害基礎年金と障害厚生年金
- 障害基礎年金と遺族厚生年金
- 老齢基礎年金と遺族厚生年金
このように、障害基礎年金と3つの厚生年金、遺族厚生年金と3つの基礎年金は併給可能
試験対策としては、障害基礎年金と厚生年金3種のパターン、遺族厚生年金と基礎年金3種はOKと覚えておきましょう。
併給調整
遺族厚生年金を受け取っている配偶者が65歳になって自分の老齢厚生年金を受給できるようになった場合、自分の老齢基礎年金+老齢厚生年金を受け取ることが優先される。
ただし、老齢厚生年金<遺族厚生年金の場合は、差額が遺族厚生年金として支給される。なお、配偶者の老齢厚生年金の方が高い場合は全額支給停止となる。