独学で学ぶFP2級|タックスプランニング(2)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、私独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 各種所得の内容
各種所得の内容
ここでは、所得税の対象となる10種類の所得の計算方法を説明
所得税の計算では、それぞれの所得額を個別に算出することが最初のステップとなる
- 利子所得
- 配当所得
- 事業所得
- 不動産所得
- 給与所得
- 譲渡所得(不動産等の譲渡所得・上場株式等の譲渡所得)
- 一時所得
- 山林所得
- 退職所得
- 雑所得
1. 利子所得
利子所得の対象
- 預貯金の利子
- 公社債(国債など)の利子
- 公社債投資信託の収益分配金
利子所得の計算
利子所得は必要経費などが認められていないため、収入金額がそのまま利子所得となる
利子所得の課税方法
- 預貯金の利子は源泉分離課税。税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
- 特定公社債の利子と、収益分配金は申告分離課税。税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
試験対策として、所得税の15.315%の内訳は、所得税15%と復興特別所得税15%×2.1=0.315%を合わせたものです
FP2級の範囲外ですが、総合課税の利子所得となるものは「同族会社が発行した社債の利子で、その同族会社の役員等が支払を受けるもの」や、「海外の銀行に預金があり利子を受け取った場合」などになります。
FP2級のテキストなどの所得税の図では、利子所得は総合課税になっていますが、馴染みのある利子は厳選分離課税か申告分離課税です
2. 配当所得
配当所得の対象
- 法人から受ける利益の配当(株式の配当金)
- 公社債投資信託以外の投資信託の収益分配金(株式投資信託、ETF、J-REITなど)
配当所得の計算
配当所得 = 配当収入 ー 株式等を取得のための借入金の利子
配当所得の課税方法
特定口座(源泉徴収あり)を選択することによる申告不要制度、申告分離課税、総合課税から選択することができる
- 総合課税を選択した場合は配当控除が、申告分離課税を選択すると配当所得と上場株式等の譲渡損失と損益通算することが可能
- 非上場の株式等については原則、総合課税。非上場株式の配当金が「10万円×配当計算期間の月数÷12」以下である少額配当については確定申告は不要
- 発行済み株式総数の3%以上を保有している大口株主は総合課税
これらをまとめたものが下表
大口株主以外・上場株式等 | 大口株主 非上場株式 | |||
確定申告 | 申告不要制度 | 申告分離課税 | 総合課税 | 総合課税 |
配当控除 | × | × | ⚪︎ | ⚪︎ |
上場株式等の譲渡損失との損益通算 | × | ⚪︎ | × | × |
税率 | 源泉徴収済み | 20.315% | 累進課税 | 累進課税 |
3. 事業所得
事業所得の対象
- 継続的に行う事業から生じた所得
- 農業、漁業
- 製造業、卸売業
- 小売業
- サービス業など
FP2級範囲ではないですが、豆知識として確定申告書類では、記入欄が農業と営業等に分かれています
事業所得の計算
事業所得 = 総収入金額 ー 必要経費
- 事業の売り上げ
- 手数料収入
- 取引先への貸付金の金利など事業を行う上で付随して発生した収入
- 売上原価(商品の仕入れや製造費用)
- 減価償却費
- 給料・賃金・接待交際費、家賃、水道光熱費
- 事業用資産の固定資産税など
減価償却費
減価償却費とは、固定資産を取得した場合に、全額をその年の費用とせずに耐久年数に応じて配分し、その年の分に相当する額を費用として計上する方法。減価償却費については、法人税で詳しく説明する
事業所得の課税方法
事業所得は総合課税
4. 不動産所得
不動産所得の対象
- 土地や建物などの不動産の貸付
- 地上権、借地権、借家権などの不動産の上に存在する権利の設定・貸付
- 船舶・航空機の貸付
- 不動産所得になるもの
- 家賃収入
- 月極駐車場の賃料
- 賃貸マンションの礼金や保証金のうち返還を要しないもの
- 不動産所得でないもの
- 時間貸駐車場(コインパーキング)の賃料→事業所得
5棟10室の事業的規模でも、不動産の貸付は事業所得ではなく不動産所得となります
不動産所得の計算
不動産所得 = 総収入金額 ー 必要経費
- 家賃、地代、駐車場収入、権利金
- 礼金、更新料
- 返還を要しない敷金・保証金
- 租税公課(固定資産税、不動産所得税、登録免許税、都市計画税)
- 所得税、住民税は必要経費にはならない
- 減価償却費、修繕費、管理費、立退料
- 火災保険料
- 募集広告費など
- 不動産取得のための借入金の利子(元本は必要経費にならない)
不動産所得の課税方法
不動産所得は総合課税
5. 給与所得
給与所得の対象
- 給与、賃金、賞与、これらの性質を有するもの
- 手当(残業手当、休日出勤手当、家族手当、住宅手当など)
- 通勤手当のうち一定額以下のもの、撤去や出張の旅費のうち通常必要と認められるもの等は除外
給与所得の計算
給与所得 = 給与等の収入金額(年収) ー 給与所得控除額
給与所得控除額は以下の表の計算で求める
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円以下 | 55万円 |
162万5,000円超 180万円以下 | 収入金額×40% – 10万円 |
180万円超 360万円以下 | 収入金額×30% + 8万円 |
360万円超 660万円以下 | 収入金額×20% + 44万円 |
660円超 850万円以下 | 収入金額×10% + 110万円 |
850万円超 | 195万円(上限) |
所得金額調整控除(子供・特別障害者等を有する者等)
その年の給与等の収入金額が850万円を超える給与所得者で次の(1)のいずれかに該当する場合、(2)の所得金額調整控除額を給与所得から控除する
- 適用対象者
- 本人が特別障害者に該当
- 年齢23歳未満の扶養親族を有する
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族を有する
- 所得金額調整控除額
控除額 = (給与等の収入金額※ - 850万円)×10%
※給与等の収入金額が1,000万円超の場合は1,000万円
所得金額調整控除(給与所得と年金の双方を有する者等)
- 適用対象者
- 給与所得控除後の給与等の金額と公的年金等に係る雑所得の金額がある給与所得者で、その合計額が10万円を超える者
- 所得金額調整控除額
控除額=給与所得控除後の給与等の金額(10万円超の場合は10万円)+
公的年金等に係る雑所得の金額(10万円超の場合は10万円) - 10万円
特別支出控除
通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費(図書費、衣服費、交際費等)が給与所得控除学の2分の1を超える場合、超えた金額を給与所得から控除できる
給与所得の課税方法
給与所得は総合課税。原則として確定申告が必要だが、給与所得者で給与所得以外の所得がない場合は、原則、源泉徴収のみで課税関係を終了することができ、確定申告は必要ない
源泉徴収された税額に過不足があった場合、年末調整により精算することができる
6. 譲渡所得
譲渡所得は土地建物等、上場株式等、その他の資産の3つに区分される。ここでは不動産(土地、建物)、株式以外の譲渡所得を取り扱う
譲渡所得の対象
- ゴルフ会員権、金地金、30万を超える宝石や書画などの資産など
譲渡所得の計算
譲渡所得では、所有期間により短期譲渡所得と長期譲渡所得に分けられる
短期譲渡所得は所有期間が5年以下、長期譲渡所得は所有期間が5年超
譲渡所得 = 総収入金額 ー (取得費+譲渡費用)ー 特別控除額(50万円)
特別控除額(50万円)は、まず短期譲渡所得から控除し、控除しきれない場合に長期譲渡所得から控除する
短期譲渡所得から控除するのは、長期譲渡所得は後の計算で2分の1になるので短期譲渡所得から先に控除した方が有利となるから
譲渡所得の課税方法
譲渡所得は総合課税(不動産・株式等を除く)
他の所得との合算時に、長期譲渡所得は2分の1にして合算される
試験対策として、長期譲渡所得は合算時に2分の1になることを覚えておきましょう
6-1. 不動産等の譲渡所得
不動産に関連する譲渡所得
不動産等の譲渡所得の対象
- 不動産(土地、建物)
譲渡所得の計算
譲渡所得 = 総収入金額(物件を売った金額等) ー (取得費+譲渡費用)ー 特別控除額
- 譲渡年の1月1日において5年超のものが長期譲渡所得、5年以下のものが短期譲渡所得となる
- 特別控除額は、「マイホームを売却した場合」など、それぞれ異なる種類が複数種類ある
試験対策としては、譲渡されたときではなく、1月1日という点に注意
譲渡所得の課税方法
不動産等の譲渡所得は分離課税。長期譲渡所得と短期譲渡所得で税率が異なる
6-2. 上場株式等の譲渡所得
上場株式等に関連する譲渡所得。「上場株式等」とは、金融商品取引所に上場されている株式等(ETF, J-REIT等を含む)、一定の条件を満たす投資信託、国債および地方債などがある。
上場株式等の譲渡所得の対象
- 株式等
上場株式等の譲渡所得の計算
譲渡所得 = 総収入金額 ー (取得費+譲渡費用)+負債利子
上場株式等の譲渡所得の課税方法
上場株式等の譲渡所得は分離課税
7. 一時所得
一時所得の対象
一時所得は、営利目的ではない行為から発生した一時の所得
- 契約者本人が受け取る満期保険金、解約返戻金
- 懸賞金や賞金
- 競馬や競輪の払戻金
- 法人から贈与された金品(業務に関して受け取るものを除く)
一時所得の計算
譲渡所得 = 総収入金額 ー 収入を得るために支出した金額 ー 特別控除額(50万円)
一時所得の課税方法
一時所得は総合課税。他の所得との合算時に、2分の1にして合算される。一時所得が赤字の場合は他の所得とは合算できない
8. 山林所得
山林所得の対象
- 山林の伐採または譲渡による収入(山林を取得して5年以内に伐採または譲渡した場合は、事業所得または雑所得)
山林所得の計算
山林所得 = 総収入金額 ー 必要経費 ー 特別控除額(50万円)
山林所得の課税方法
山林所得は分離課税。税額の計算は5分5乗方式
$$
税額=\biggl(山林所得の金額\times \frac{1}{5} \times 税率\biggr)\times 5
$$
数式だけ見ると1/5して5倍するだけなので意味なさそうですが、1/5した価格で税率(金額により異なる)を計算して5倍する部分がポイント。金額が1/5になるので税率が低くなります。
9. 退職所得
退職所得の対象
- 退職金、役員退職金、退職手当
- 企業年金(確定拠出年金を一時金として受け取った場合など)
- 個人型確定拠出年金(iDeCo)を一時金として受け取った場合
退職所得の計算
$$
退職所得 = (\ 退職金 \ – \ 退職所得控除額 \ ) \times \frac{1}{2}
$$
勤続年数が20年以下の部分と、勤続年数が20年超の部分で1年あたりの控除額が異なります。また、1年未満の端数期間は切り上げになります。
例)勤続年数が30年1ヶ月の場合
端数を切り上げて勤続年数は31年として計算
退職所得控除額=40万円×20年+70万円×(31年−20年)=1,570万円
勤続年数 | 1年あたりの控除額 |
20年以下の部分 | 40万円 |
20年超えの部分 | 70万円 |
勤続年数が5年以下の従業員については、退職金額から退職所得控除額を控除した残額のうち、300万円を超える部分については2分の1されない
退職所得の課税方法
退職所得は分離課税。会社に対して退職所得の受給に関する申告書を提出すると、原則として確定申告不要となる
10. 雑所得
雑所得の対象
- 他のいずれにも該当しない所得
- 公的年金等の雑所得
国民年金、厚生年金、国民年金基金、厚生年金基金、確定拠出年金からの養老給付金 - 公的年金以外の雑所得
講演料、原稿料や印税(作家以外)、外国預金の為替差益
- 公的年金等の雑所得
雑所得の計算
雑所得 = 公的年金等の雑所得 + 公的年金以外の雑所得
公的年金以外の雑所得 = 総収入金額 ー 必要経費
公的年金等の雑所得 = 公的年金等の金額 ー 公的年金等控除額
公的年金等控除額(所得が年金のみ、または、年金以外の所得が年間1,000万円以下場合)
公的年金等の金額(年金額) | 公的年金等控除額 | |
65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 |
130万円超〜410万円以下 | 年金額×25%+27万5千円 | |
410万円超〜770万円以下 | 年金額×15%+68万5千円 | |
770万円超〜1,000万円以下 | 年金額×5%+145万5千円 | |
1,000万円超 | 195万5千円 | |
65歳以上 | 330万円以下 | 110 万円 |
330万円超〜410万円以下 | 年金額×25%+27万5千円 | |
410万円超〜770万円以下 | 年金額×15%+68万5千円 | |
770万円超〜1,000万円以下 | 年金額×5%+145万5千円 | |
1,000万円超 | 195万5千円 |
雑所得の課税方法
雑所得は総合課税