独学で学ぶFP2級|リスク管理編(3)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 損害保険 (1)
- 損害保険 (2)火災保険・地震保険
- 損害保険 (3)自動車保険
- 損害保険 (4)賠償責任保険
- 損害保険 (5)傷害保険
- 損害保険 (6)その他の保険
- 損害保険 (7)税金
損害保険 (1)
損害保険の用語
用語 | 説明 |
保険価額 | 保険対象のものの価値を金銭で評価した額。保険事故の発生により、被保険者が被る可能性のある損害の最高限度額 |
保険金額 | 保険事故が発生した場合に保険会社が支払う保険金の限度額 |
保険の対象(保険の目的) | 保険を付ける対象 |
保険事故 | 保険契約において、保険金の支払う対象 |
再調達価額 | 保険の対象と同等のものを新たに取得するのに必要な額 |
時価額 | 現時点での商品の市場価格 |
全損 | 保険の対象が完全に滅失した場合、修理、回収に要する費用が再調達価額または時価額を超えるような場合のこと |
再保険 | 保険会社が保険料の支払い責任の全額または一部を他の保険会社に移転するための仕組み。巨額の保険金支払いが予測される場合にリスクを分散することを目的とする |
損害保険の原則
大数の法則
確率・統計学における基本定理。サイコロの目も、試行回数を増やせば各目の出現率が確率に収束するという考え方。
保険の場合は、過去のデータの統計をとることで、年齢別の死亡率などを予測し、保険料を算出するのに使われる
収支相当の法則
$払込保険料総額=支払保険料総額+経費$となるように保険料を算出する。
つまり保険会社が受け取る保険料(+経費等)の総額が、支払う保険料と等しくなるように保険料を算定する原則のこと
給付・反対給付均等の原則
保険契約者が支払う保険料と、保険事故発生時に支払われる保険金が数学的に等しいことを指す原則。危険度が高いほど、保険料が高くなる
利得禁止の原則
保険で得をしてはならないという原則
保険金額・保険価額
保険金額・保険価額の関係で以下のように分類される。なお、超過保険で超過分が無効になるのは、利得禁止の原則のため。
用語 | 説明 |
全部保険 | 保険金額=保険価額の保険のこと |
超過保険 | 保険金額>保険価額の保険のこと ※超過分は契約者に過失がなくても無効 |
一部保険 | 保険金額<保険価額の保険のこと |
損害保険 (2)火災保険・地震保険
火災保険とは
火災保険は、建物や建物に収容している動産(家財など)に生じた火災による損害を補償する保険
火災保険の補償対象
建物と動産は別々に契約する(片方のみ選択も可能)
- 建物
- 「T構造(耐火構造)」「M構造(マンション)」「H構造(非耐火構造)」に分けられる
- 門・塀・車庫なども対象
- 動産
- 家財一式
- 敷地内に止めてある原付・バイク
- 貴金属や宝石などの単品30万円を超える貴重品は明記物件として別枠契約
- 現金などは対象外
- 補償対象
- 落雷・風災・ひょう災・水災による損害
- 補償対象外
- 地震・噴火・津波による損害
- 自動車の損害
火災保険の保険金額
保険金額が保険価額の80%以上
実際の被害額が保険金として支払われる(実損てん補)
保険金額が保険価額の80%未満
保険金額の保険価額に対する割合に比例して支払われる(比例てん補)
試験対策としては、保険金額・保険価額を間違えないようにしましょう
火災保険の種類
住宅火災保険 | 火災・落雷・爆発・風災・雪災・消防活動による水濡れなどが対象 |
住宅総合保険 | 住宅火災保険の補償内容に加えて、落下物による被害・水漏れ・盗難・水災(洪水や床上浸水)などが対象 |
団地保険 | 住宅総合保険の補償内容に加えて、団地内の傷害事故や賠償事故も対象 |
普通火災保険 | 住宅火災保険と同じ |
店舗総合保険 | 住宅総合保険と同じ |
地震保険とは
火災保険では補償されない、地震・噴火・津波による損害を補償する保険。居住用建物(店舗併用を含む)と、建物に収容している家財を対象とする
- 30万円を超える貴重品は対象外
- 火災保険に付帯が原則・中途付帯は可能。単体契約不可
- 主契約の火災保険の期間内で1年または最長5年更新の契約が可能
- 地震発生後10日を経過した後の損害は対象外
- 被災地が重複する72時間以内に発生した2つ以上地震などは、1回の地震とみなす
地震保険
保険対象 | 住居のみに使用される建物(店舗併用住宅を含む)及びその家財 |
対象事故 | 地震・噴火・津波による火災・損壊など |
保険金額 | 火災保険の保険金額の30%〜50%以内 建物は5,000万円、家財1,000万円が上限 |
保険料 | 補償内容が同じであれば、どの保険会社でも同額 |
割引制度 | 建築年割引(10%) 耐震等級割引(10~50%) 免震建築物割引(50%) 耐震診断割引(10%) ※重複して適用はできない |
保険料の支払い | 支払区分は「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4つ 全損 保険金額の全額 大半損 保険金額の60% 小半損 保険金額の30% 一部損 保険金額の5% |
建物の構造 | イ構造(耐火・準耐火等)、ロ構造(イ構造意外)の2区分 |
試験対策として、地震保険の保険料はどの保険会社でも同額ということは覚えておきましょう
政府と保険会社が共同で運営(政府が再保険)しているので、補償内容と保険料が各社同じになっているんだっけ。
損害保険 (3)自動車保険
自動車保険とは
自動車保険は必ず加入しなければならない自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)と、任意で加入する自動車保険がある。
自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)
自動車賠償補償法により、自動車および原動機付自転車(原付)を使用する際に加入が義務づけられている損害保険。補償は、対人賠償のみで、対物賠償はない。
死亡事故の場合
被害者1人あたり最高3,000万円
傷害事故の場合
被害者1人あたり傷害120万円
後遺障害がある場合は程度により75万円〜4,000万円
任意の自動車保険
任意に加入する民間の自動車保険。色々な保険の種類があり、組み合わせて契約するのが一般的
- 対人賠償保険
自動車事故で被害者を死傷させた場合、自賠責保険で支払われる金額を超える部分に対して保険金が支払われる。運転者本人や家族が被害者の場合は対象外
無免許運転・酒酔い運転でも支払われる。保険金の額は無制限にすることが可能 - 対物賠償保険
自動車事故で、他人の車や家などに損害を与えた場合に保険金が支払われる。被保険者本人やその家族の損害は補償されない。保険金の額は無制限にすることが可能 - 搭乗者傷害保険
搭乗者(運転者を含む)が自動車事故で死傷した場合に、過失の有無に関係なく保険金が支払われる - 自損事故保険
自損事故により、搭乗者が死傷した場合に保険金が支払われる - 無保険車傷害保険
賠償能力が十分でない相手との交通事故で、死亡や後遺障害等を被った場合に保険金が支払われる - 車両保険
自分の車の車両損害を補償する保険で、接触・火災・盗難・洪水・高潮・爆発などの偶発的な事故で損害を被った場合に保険金が支払われる。契約条件によっては、自損事故も対象になる。なお、地震・噴火・津波による損害は、特約の付加が必要 - 人身傷害補償保険
被保険者またはその家族に対して自動車事故全般での死傷を補償する保険。他の車に乗車中・歩行中などの自動車事故も補償の対象となる。自身の過失部分を含めて損害額の全額が示談成立を待たずに保険会社から支払われる
試験対策としては、それぞれ何が補償されるか・対象外は何かを覚えておきましょう
SAP、PAP、BAP
任意保険の種類。SAP(Special Automobile Policy)は自家用自動車総合保険と呼ばれるセット契約、PAP(Package Automobile Policy)は自家用自動車保険と呼ばれるセット契約、BAP(Basic Automobile Policy)は補償の中で自分に必要だと思う保険だけを選択する契約形態
以下はSAPとPAPの違い。
SAP | PAP | |
対人賠償保険 | ○ | ○ |
対物賠償保険 | ○ | ○ |
搭乗者傷害保険 | ○ | ○ |
自損事故保険 | ○ | ○ |
無保険者傷害保険 | ○ | ○ |
車両保険 | ○ | × |
交渉代行 | ○ | △ |
フリート契約とノンフリート契約
フリート契約とは、10台以上の自動車をまとめて契約するもの。ノンフリート契約は1台ごとに契約するもの
- フリート契約
- 10台以上の自動車をまとめて契約
契約者が所有し、自ら使用している自動車。原則として、自動車車検証などの「所有者欄」「使用者欄」が契約者名義となっている自動車 - 契約期間は1年以上
- 前契約期間の等級・事故件数等により割増引率が決定
- 10台以上の自動車をまとめて契約
- ノンフリート契約
- 1台ごとに契約
- 保険の割増・割引は等級(1から20等級の区分)で決定
損害保険 (4)賠償責任保険
個人賠償責任保険
個人またはその家族が、日常生活で偶然の事故で他人にケガをさせてしまったり、他人のモノを壊してしまったりした場合の、法律上の損害賠償責任を補償する保険。一般的に、訴訟費用や弁護士費用を含む
火災保険や傷害保険・自動車保険などの特約(オプション)として加入する場合が多い
- お店の商品を、代金を支払う前に壊してしまった
- ペットが他人を噛んでケガをさせてしまった
- ベランダから誤って物を落としてしまい、通行人にケガをさせた
- 自転車で歩行者をはねてしまった
- 仕事中の賠償事故
- 借りたデジタルカメラを壊した(借りた物や預かり物を壊した)
- 同居の家族の物を壊した
自転車通勤(自転車を構内に駐車できること)の条件として、個人賠償責任保険に契約していることを義務付けている企業などもあります
生産物賠償責任保険(PL保険)
生産物賠償責任保険(PL保険)は、製造・販売した商品(生産物)や業務の結果が原因となり、賠償事故が発生した場合の製造業者・販売業者・工事業者の賠償金や弁護士費用を補償する保険。故意または重大な過失による賠償は対象外
施設所有(管理)者賠償責任保険
施設所有(管理)者賠償責任保険は、所有・使用・管理している施設・設備・用具の不備や業務活動中の事故により来客者などの他人が被害を受けた場合の、施設所有者や管理者の損害賠償責任を補償する保険。契約している法人の従業員、施設のエレベータは対象外(※エレベータは昇降機賠償責任保険の対象)。
請負業者賠償責任保険
請負業者賠償責任保険は、建設・土木工事などの請負業者が行う業務による事故の損害賠償責任を補償する保険
受託者賠償責任保険
受託者賠償責任保険は、他人から預かった受託物を保管・管理している間に発生した事故により、預かった物に損害を与えた場合に対する損害賠償責任を補償する保険
損害保険 (5)傷害保険
障害保険は、急激、偶然、外来の事故によって傷害等を負った場合に保険金が支払われる
「急激、偶然、外来の事故」とは、交通事故・運動中の打撲・骨折・転倒・火災・爆発などの偶然の事故です
普通傷害保険
概要
- 国内外・業務中/業務外を問わない
- 職業・年齢・性別による保険料の差はない
補償の対象外
- 危険なスポーツ
- 戦争・地震・噴火・津波
- 内部疾患が原因
- 熱中症・靴づれなど
家族傷害保険
1つの契約で家族全員を被保険者とする保険。補償内容は、普通傷害保険と同じ
交通事故傷害保険
概要
- 国内外を問わない
- 乗物(駅構内やエレベーター、エスカレーター含む)の事故が対象
- 家族を対象とした商品もある
国内・海外旅行保険
概要
- 旅行での自宅出発から帰宅までを補償
- 殺菌性・ウィルス性食中毒も補償
- 海外旅行保険は疾病も補償(保険金は実費払い)。地震・噴火・津波のケガも補償
損害保険 (6)その他の保険
機械保険
機械保険は、不測かつ突発的な事故により生じた機械設備・装置の損害を補償する保険(火災事故は対象外)
店舗休業保険
火災・落雷・破裂・爆発・風災・雪災・水災・盗難および食中毒や特定の感染症などの発生により、営業ができなくなることによる休業損失を補償する保険
労働災害総合保険
公的保険(労災保険)の上乗せ補償を目的とした保険。労災保険に加入している企業が加入可能
企業費用・利益総合保険
偶然な事故による営業収益の減少による損失や、営業を継続するための費用等を補償する保険。建物や設備・機械等の火災・爆発・風災などの偶発な事故が含まれる。
会社役員賠償責任保険(D&O保険)
Directors&Officersの略で、取締役と監査役等の役員のための賠償責任保険。役員の業務遂行に対する行為による発生した損害賠償金・争訟費用を補償する保険。
損害保険 (7)税金
個人契約の損害保険の税金
地震保険料控除
地震保険の保険料が、一定の範囲で所得控除できる仕組み(火災保険料は控除対象にならない)
自己および生計を一にする配偶者やその親族が保有する居住用家屋、およびその動産を対象とした地震保険・共済が控除の対象
店舗併用住宅の場合、建物全体の90%以上が居住用の場合、全額が控除対象となる
所得税 | 年間払込保険料の全額(最高5万円まで) |
住民税 | 年間払込保険料の半額(最高2万5,000円まで) |
保険金の税金
個人が受け取る損害保険の保険金は、非課税(死亡保険金を除く)
死亡保険金は、生命保険と同じく契約者・被保険者・保険金受取人の関係により、相続税、所得税(一時所得)、贈与税のいずれかの対象となる
満期返戻金・契約者配当金がある場合は一時所得の対象
法人契約の損害保険の経理処理
保険料の経理処理
法人の場合、損害保険料は保険期間の経過に応じて損金参入する。損金参入するのはその事業年度の保険料のみで、前払保険料は資産計上
個人事業主の場合、法人に準ずる(損金にあたる部分は必要経費扱い)
保険金の経理処理
満期返戻金・契約者配当金
原則、益金算入。資産計上されている積立保険料は損金参入
火災保険の保険金
益金算入。建物の場合で受け取った保険金で新たな建物を所得する場合は圧縮記帳が可能
傷害保険の保険金
受取人が法人の場合、益金算入。遺族に直接支払われた場合は経理処理なし
自動車保険の保険金
益金算入(圧縮記帳可能)。修理費用は損金算入
満期返戻金・契約者配当金
一時所得
火災保険の保険金
建物の場合は非課税。棚卸資産(商品)・店舗休業保険などは事業収入
傷害保険の保険金
受取人が事業主の場合、事業収入。遺族に直接支払われた場合は経理処理なし
自動車保険の保険金
経理処理なし
圧縮記帳について
一定期間内に代替資産を取得する場合は、法人が受け取った建物などに対する保険金との圧縮記帳が認められている。
試験対策としては、益金になるか損金になるかは覚えるのではなくイメージとして理解しておいた方がよいです
災害時の税金
- 雑損控除(所得控除)
- 災害・盗難・横領の場合
- 本人または生計を一にする親族(総所得金額が48万円以下)
- 住宅や家財が対象
- 控除額①と②のどちらか大きい額
① 損失額ー合計所得金額の10%
② 災害関連支出額ー5万円 - 住民税にも適用あり
- 災害減免法(税額控除)
- 合計所得が1,000万円以下の者または生計を一にする親族(総所得金額が48万円以下)
- 損害金額が、その時価の2分の1以上の場合、合計所得金額に応じて、所得税が全額免除または軽減
- 住民税には適用なし
雑損控除と災害減免方の両方の要件を満たす場合は、有利な方を選択(両方適用はできない)
試験対策としては、所得控除と税額控除と控除される場所が違うことです