期間短縮型と返済額軽減型|住宅ローンの繰上げ返済の2つの選択肢を解説
繰上げ返済には、期間短縮型と返済額軽減型の2つが存在することを知っていますか?ここでは、この2つの違いについてわかりやすく解説したいと思います。また、同じ条件でシミュレーションして、その違いについても確認します。
繰上げ返済って何?
住宅ローンの返済は、20〜35年と長期間の返済を行わなければなりません。最近は、フラット50という最長50年の住宅ローンもあり、支払い期間はますます長期化しています。
繰上げ返済とは、月々の返済とは別に、まとまった金額を返済する方法です。繰上げ返済したお金は、全て元本の返済に充当されるので、その分の利息の支払いがなくなり、総支払額を減らすことができます。
本記事では、住宅ローンの繰上げ返済に焦点を当て、特に「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つの違いについて解説します。
期間短縮型の繰上げ返済とは
住宅ローンの期間短縮型の繰上げ返済は、繰上げ返済をすることで返済期間を短くする方法です。期間短縮型の繰上げ返済では、月々の返済額は変わりませんが、返済期間が短くなります。
住宅ローンの返済額軽減型の繰上げ返済は、月々の返済額を引き下げる方法です。返済額軽減型の繰上げ返済では、返済期間は変わりませんが、月々の返済額は少なくなります。
以下の図は、繰上げ返済のイメージ図です。
- 繰上げ返済なし
横軸が返済期間、縦軸が毎月の返済額です。図のように期間中の返済額は一定ですが、最初のうちは利息部分が多く、元本部分は少なめです。返済が終わりに近づくにつれて、月々の返済額のうち元本部分に占める割合が大きくなります - 期間短縮型
期間短縮型では、繰上げ返済することで返済期間を短縮します(上図2)。これにより、短縮される期間に支払うはずの利息が軽減されます - 返済額軽減型
返済額軽減型では、繰上げ返済により借入金額が減り、それに合わせて利息が軽減されます(上図3)
最初のうちは、利息部分が大きいのは、借入金額が多いからです。返済していくと徐々に借入金額が減り、それに伴って利息も減っていきます。
繰上げ返済は元本に充当されるので、期間短縮型と返済額軽減型のどちらを選んでも、利息部分が減り返済額は少なくなります。
期間短縮型のメリット
- 返済期間が短縮できる
例えば、退職後まで住宅ローンを払う計画だった場合、繰上げ返済をすることで退職前にローンの支払いを完了させることができます - 総返済額を減らせる
繰上げ返済により、総返済額を減少させることができます - 将来の金利上昇リスクを軽減できる
変動金利型の住宅ローンの場合、早期に返済することで将来の金利上昇リスクを軽減できます。
返済額軽減型のメリット
- 月々の返済額を減らせる
月々の返済額を減らすことができるので、生活資金に余裕ができます。また、ローン返済の額が減るため精神的にも楽になります - 総返済額を減らせる
繰上げ返済により、総返済額を減少させることができます
考慮すべきポイント
期間短縮型、返済額軽減型のどちらを選んでも、繰上げ返済により総返済額は減少します。
税制面でのポイント
税制面では、借入れ額が減るため、所得税の住宅ローン控除を受けている場合は、控除額が少なくなります。
どちらを選ぶ?選択のポイントは?
住宅ローンの繰上げ返済として、期間短縮型と返済額軽減型のどちらを選べばよいでしょうか。
一般的に、期間短縮型の方が利息の軽減効果は大きくなります。利息の軽減を期待する場合は期間短縮型を選択した方がよいです。
また、毎月の返済額を減らしたい場合は、返済額軽減型を選んだ方がよいでしょう。
どちらが良いかは、繰上げ返済のタイミング等によって変化しますので、金融機関の担当者やファイナンシャルプランナーにシミュレーションをしてもらって決定するのが良いと思います。
シミュレーションしてみる
「知るぽると」の繰上げ返済シミュレーションを使う
金融広報中央委員会の情報サイト「知るぽると」に、繰上げ返済シミュレーションがありますので、これを使って簡単なシミュレーションを行ってみたいと思います。
- Ke!san:生活や実務に役立つ計算サイト
- 価格.com:住宅ローン繰上げ返済シミュレーション
- 日本住宅ローン:住宅ローンシミュレーション(複数回に分けた繰上げ返済のシミュレーションが可能です)
モデルケースでシユレーションを行う
ここでは、以下のような条件でシミュレーションしてみます。金利は現在のフラット35の平均的な金利1.5%を利用しました。
借入金3,000円, 金利1.5%, 返済期間30年, ボーナス払いなし, 元利金等返済
10年後に300万円を繰上げ返済
シミュレーション結果
シユレーション結果は以下のようになります。住宅ローン開始から10年後に300万円の繰上げ返済をした場合、期間短縮型では3年2ヶ月の期間短縮、約95万円の利息軽減になります。また、返済額軽減型では、月の支払いを約14,500円減額、約47万円の利息軽減になります。
繰上げ返済前 | 期間短縮型 | 返済額軽減型 | |
毎月返済額 | 103,536円 | 103,536円 | 89,007円 |
残り返済期間 | 20年0ヶ月 | 16年10ヶ月 | 20年0ヶ月 |
利息の軽減額 | 0円 | 950,594円 | 472,234円 |
このように、繰上げ返済の効果はかなり高いことがわかります。
手数料に注意
上記のシミュレーションには、繰上げ返済を行う手数料が含まれていませんでした。手数料は、金融機関によって数千円〜数万円と差があります。実際には、この手数料も考える必要があります。
繰上げ返済を考えている場合には、ローンするときに、繰上げ返済の手数料も確認しておきましょう
変動金利などの場合
変動金利、期間選択型固定金利などを選択して住宅ローンを組んでいる場合は、将来の金利変化にも気をつける必要があります。
ローン当初の金利が固定される期間選択型固定金利を選択している人も多いと思います。金利が高くなるとローンの返済額も多くなるので、繰上げだけでなく借り換えも含めて検討が必要になります。
まとめ
住宅ローンの繰上げ返済では、慎重な検討が重要です。自身でシミュレーションしたり、金融機関の担当者やファインアンシャルプランナーにシミュレーションをお願いしたり意見を聞いたりして、賢い選択をするようにしましょう。
ここで紹介した知るぽるとだけでなく、返済シミュレーションができるサイトはたくさんありますので、そういうサイトを活用することをおすすめします。