独学で学ぶFP2級|不動産(4)
FP2級の学習(独学)に役立つ無料テキスト(教科書)を作成しました。このテキストはFP2級試験の幅広い範囲を網羅しており、効果的な学習の参考資料として活用できます。ぜひ、FP2級合格のために役立ててください。また、記事には、私独自の試験対策コメントも入れていますので参考にしてください。
FP2級試験範囲を順に進めていきます。この記事では以下を取り上げます。
- 不動産の取得・保有に係る税金(1)取得に係る税金
- 不動産の取得・保有に係る税金(2)保有に係る税金
- 不動産の譲渡に係る税金
不動産の取得・保有に係る税金(1)取得に係る税金
不動産の取得にかかる税金です
不動産取得税
不動産取得税とは、土地や建物を購入したといに係る税金
納付先は都道府県(地方税)
- 課税対象
不動産の売買・交換・贈与・新築・増改築 - 課税対象とならないもの
相続・遺贈、法事の合併による不動産の取得
固定資産税標準価格が10万円未満の土地、23万円未満の家屋の建築・増改築 - 課税標準
固定資産税評価額。宅地の場合は課税標準額は固定資産税評価額の2分の1に軽減 - 税率
標準税率4%、土地や住宅は特例措置により3%
まとめると、不動産所得の税率は、以下のような感じです
- 原則は4%
- 軽減措置で
宅地は評価額×1/2×3%
住宅は評価額×3%
住宅の場合は、固定資産税評価額から一定額を控除した額を課税標準にできる
- 新築住宅(自己居住用、賃貸どちらも可)
- 固定資産税評価額から1,200万円控除(長期優良住宅は1,300万円)
床面積が50㎡以上(賃貸アパートの場合は40㎡以上)240㎡以下が条件
- 固定資産税評価額から1,200万円控除(長期優良住宅は1,300万円)
- 中古住宅(自己居住用のみ可)
- 築年数に応じて100万円〜1,200万円を固定資産税評価額から控除
- 50㎡以上240㎡以下が条件
印紙税
印紙税とは、印紙税法で定められた課税文書に対して課税される税金(国税)
課税義務者
課税文書の作成者。契約書を2部作成(買主と売主分)する場合は、双方に印紙税を払う(原本と写しで、写しを単なる控えとしていれば課税文書とならない)
課税対象
不動産取引の場合は、不動産の売買契約書・土地の賃貸借契約書、工事請負契約書・金銭消費貸借契約書、領収書などの課税文書(建物の賃貸借契約書などは印紙税は課税されない)
課税額
文書記載の金額に応じて課税
納税方法
課税文書に収入印紙を貼付けし、印紙に消印を行うことで納税
罰則等
印紙を貼らなかった場合、本来の収入印紙の金額+2倍の金額の合計3倍が過怠税として課せられる。印紙に金額不足があった場合は不足分に対して同様に過怠税として課せられる。消印忘れの場合には、印紙とは別に同額(1倍)の過怠税が課せられる
登録免許税
登録免許税は、土地・建物を取得して登記するときに課税される国税
表題部の登記は非課税で、表題登記は取得から1ヶ月1内に行う必要がある
所有権移転登記の場合は、登記権利者(買主)と登記義務者(売主)の両方が納税義務者となる。
登録免許税 = 固定資産税評価額(抵当権設定登記では債券金額)×税率
税率は以下の表の通り
登記の種類 | 本則(標準税率) | 軽減税率 | |
住宅用家屋 | 所有権保存登記 | 0.4% | 0.15% |
所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% | |
土地 | 所有権移転登記 | 2.0% | 0.3% |
ー | 抵当権設定登記 | 0.4% | 0.1% |
消費税
消費税については、土地は非課税(1ヶ月未満の貸付は課税)
建物は課税(ただし、住宅は非課税)
不動産の取得・保有に係る税金(2)保有に係る税金
不動産を保有している場合にかかる税金です
固定資産税
固定資産税は、土地や建物などの固定資産を所有している者に課せられる地方税で市区町村が課税するもの
固定資産税額 = 課税標準額 × 税率
納税義務者
1月1日現在の固定資産の所有者(固定資産税課税台帳に登録されている者)
課税標準額
固定資産税評価額
標準税率
1.4%
納付方法
原則、4月、7月、12月、2月の年4回に分けて納付。一括納付も可能
住宅用地に対する標準課税の特例
住宅用地については、その面積と広さに応じて軽減措置がある
小規模住宅地(200㎡以下の部分) | 課税標準額が固定資産税評価額の6分の1に軽減 |
一般住宅地 | 課税標準額が固定資産税評価額の3分の1に軽減 |
新築住宅の税額の軽減特例
一定の要件を満たす新築住宅の場合、固定資産税が2分の1になる特例がある
新築住宅(戸建) | 床面積が120㎡以下の部分について、税額が2分の1(3年間) ※認定長期優良住宅は5年間 |
新築中高層耐火住宅・準耐火住宅 | 床面積が120㎡以下の部分について、税額が2分の1(5年間) ※認定長期優良住宅は7年間 |
- 軽減措置を受けるには居住用部分の床面積が50㎡以上(賃貸の場合は40㎡)280㎡以下である必要がある
- 軽減措置を受けるには、店舗併用住宅の場合は、居住用部分の割合が2分の1以上でなければならない
都市計画税
都市計画税は、都市計画事業(道路、水道、公園などの公共施設の整備)や、土地区画整理事業の費用に充てることを目的とした地方税で市区町村が課税するもの
納税義務者
1月1日現在の市街化区域内の不動産の所有者
課税標準額
固定資産税評価額
税率
0.3%
住宅用地の課税標準の特例
小規模住宅地(200㎡以下の部分) | 課税標準額が固定資産税評価額の3分の1に軽減 |
一般住宅地(200㎡超の部分) | 課税標準額が固定資産税評価額の3分の2に軽減 |
- 都市計画税の税率は、市区町村が条例で定めることが可能だが、上限は0.3%
- 都市計画税は、市街化区域内の土地・建物の所有者に課税されるもので、市街化調整区域や非線引き区域内の土地・建物には課税されない
不動産の譲渡に係る税金
不動産の譲渡時にかかる税金です
譲渡所得
個人が土地・建物等を売却した場合は譲渡所得になり、所得税と住民税が課税される(申告分離課税)
長期譲渡と短期譲渡
不動産の譲渡は、所有期間により短期譲渡所得と長期譲渡所得に分かれる
短期譲渡所得
譲渡のあった年の1月1日において、所有期間が5年以下の不動産の譲渡所得
長期譲渡所得
譲渡のあった年の1月1日において、所有期間が5年を超える不動産の譲渡所得
試験対策としては、短期譲渡・長期譲渡の判断は、譲渡した日ではなく、その年の1月1日ということを間違えないようにしましょう
譲渡所得の計算
譲渡所得金額 = 譲渡価格 ー (取得費 + 譲渡費用)
取得費 = 仲介手数料、印紙税、登録免許税、不動産所得税 ー 減価償却費相当額
譲渡費用 = 仲介手数料、印紙代、賃借人の立退料、建物の取り壊し費用、売却のための広告費など
短期譲渡と長期譲渡で税率が異なる
税率 | |
短期譲渡所得(所有期間が5年以下) | 39.63%(所得税30.63%、住民税9%) |
長期譲渡所得(所有期間が5年超) | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
- 取得費が不明な場合は、譲渡収入金額の5%を取得費とすることができる(実際の取得費が譲渡収入金額の5%以下の場合も同様)
住居用財産譲渡の特例
収用等により土地建物を売ったときの特例
収用とは、国や地方公共団体が公共事業のために必要となる土地・建物を土地収用法に基づいて取得すること。収容のために土地・建物を譲渡した場合、譲渡所得から5,000万円が控除される
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
居住用財産(マイホームなど)を売った場合には、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できる特例。これを、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という
- 自分が住んでいる家屋と、家屋とその敷地(借地権含む)の譲渡であること(土地のみの譲渡は対象外)
- 店舗併用住宅の場合は、居住用部分のみが対象(居住用部分が90%以上あれば全体が対象)
- 過去に居住していた居住用財産の場合は、居住しなくなってから3年後の12月31日までの譲渡であれば適用される
- 軽減税率の特例と重複適用可能
- 短期譲渡でも長期譲渡でも適用される
- 居住用財産が夫婦共有名義の場合は、それぞれが最高3,000万円まで控除可能(合計6,000万円)
- 特別関係者(配偶者、直系血族など)への譲渡は適用できない
- 前年、前々年に特例の適用を受けたことがある場合は適用できない(3年に1回)
- 譲渡した年から3年前(譲渡した年、前年、前々年)に居住用財産の買換え特例、または、譲渡損失の繰越控除等の特例を受けている場合は適用できない
居住用財産の譲渡による軽減税率の特例
居住用財産(マイホームなど)を売却する場合に、所有期間が10年を超えていれば3,000万円の特別控除に加えて軽減税率の特例が適用できる
軽減税率 | |
6,000万円以下の部分 | 14.21%(所得税10.21%、住民税4%) |
6,000万円越の部分 | 20.315%(所得税15.315%、住民税5%) |
- 譲渡した年の1月1日に所有期間が10年を超えていること
- 居住用財産の土地と建物の双方の所有期間について10年を超えていること
- 特別関係者(配偶者、直系血族)への譲渡ではないこと
- 過去に居住していた居住用財産の場合は、居住しなくなってから3年後の12月31日までの譲渡であること
- 3,000万円の特別控除とは併用可能
- 過去3年間に軽減税率の特例を使っていないこと
特定居住財産の買換え特例
所有期間が10年を超えた居住用財産(マイホームなど)を売却した新たに居住用財産を購入する場合、譲渡益に対する課税を繰り延べることができる特例
売却価格≦新たに購入した居住用財産の場合は、譲渡がなかったものとみなす
売却価格>新たに購入した居住用財産の場合は、差額部分についてのみ譲渡があったとみなす
前の家を売却した価格より、買い替えた新居の方が高ければ課税されてないという制度です
- 譲渡する居住用財産の要件
- 譲渡した年の1月1日に所有期間が10年を超えていること
- 居住期間が合計で10年以上であること
- 譲渡資産の売却額が1億円以下であること
- 特別関係者(配偶者、直系血族)への譲渡ではないこと
- 2025年12月31日までの譲渡であること
- 取得する居住用財産の要件
- 居住用であること
- 建物の面積が50㎡以上500㎡以下であること
- 中古住宅の場合、築25年以内(一定の耐震性があれば築年数の制限なし)
- 譲渡した年の前年から翌年までの3年間に取得し、取得した年の翌年末まで居住する見込みがあること
- 3,000万円の特別控除とは併用は不可能
- 居住用財産の譲渡による軽減税率の特例との併用は不可能
- 買換え資産は、譲渡した資産の取得費を引き継ぐが、所得時期は買い替えた資産の取得日になる
居住用財産の買い替えの譲渡損失の損益通算(繰越控除)
所有期間が5年を超える居住用財産(マイホームなど)を譲渡して新たに居住用財産を購入した場合に、譲渡資産に損失が生じている場合には、その他の所得と損益通算することができる。また、通算しきれない場合は、翌年以後3年間にわたって損益通算可能
- 譲渡した年の1月1日に所有期間が5年を超えていること
- 特別関係者(配偶者、直系血族)への譲渡ではないこと
- 2025年12月31日までの譲渡であること
- 新たに取得した居住用財産について、取得した年の翌年末まで居住する見込みがあること
- 取得した居住用財産について、返済期間が10年以上の住宅ローンを利用すること
- 合計所得金額が3,000万円以下の場合は、その年は適用できない
イメージとしては、住宅ローンの残金>譲渡金額の場合が一番わかりやすいかもしれません。
空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例
空き家となった被相続人の住まいを相続した場合に、一定の要件を満たせば譲渡所得の金額から3,000万円を控除する特例
- 空き家が耐震基準を満たしている、または、取り壊しをしたあとであること
- 1981年5月31日(昭和56年5月31日)以前に建築された耐震基準を満たした家屋であること
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと(分譲マンションでないこと)
- 相続開始日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までであること
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと(要介護認定を受けて老人ホーム等に入所するなどの特定事由がある場合で一定要件を満たす場合は対象となる)
- 譲渡価額が1億円以下であること
- 2027年12月31日までの譲渡であること
低未利用土地の長期譲渡所得の特別控除
都市計画区域内にある一定の低未利用土地を譲渡した場合には、譲渡所得の金額から100万円を控除することができる制度
低未利用土地とは「空き地、空き家、空き店舗」など
- 譲渡した土地等が、都市計画区域内にある低未利用土地等であること
- 低未利用土地等の上にある建物等の対価を含めて500万円以下であること
- 譲渡した年の1月1日において、所有期間が5年を超えること
- 特別関係者(配偶者、直系血族)への譲渡ではないこと
- 売った後に、その低未利用土地等の利用がされること