FIRE後、資産で何年暮らせるかモンテカルロ法でシミュレーション
いくらの資産があればFIREできると考えていますか? 資産を運用しながら取り崩す場合、リターンの揺れも考慮する必要がありますが、そこまで考慮したものは少ないと思います。
この記事ではモンテカルロ方を使ってリスクを考慮した資産の取り崩しシミュレーションをやってみたので紹介します。
JavaScriptで資産の寿命を計算するプログラムも用意しましたので、ぜひ、シミュレーションしてみてください
- FIREするのにどの程度の資産が必要か知りたい
- 資産を取り崩して、どれくらいの期間生活できるのか知りたい
はじめに
この記事では、「X万円の資産がある人が、毎年Y万円取り崩す場合、何年生活できるか」をまとめたものです。
年利r%で運用しながら取り崩すのであれば、ファイナンシャルプランニングで用いられる係数を使って計算できます。
ただ、リスクを加味すると単純な計算では難しくなります。
今回は、モンテカルロ法という数値シミュレーション手法を利用して、資産を取り崩す期間をシミュレーションし、平均値、中央値などを求めてみました。
いろんなパターンを想定して求めてみましたので参考になれば幸いです。
なお、モンテカルロ法に興味がある方は、こちらの記事を参考にしてください(プログラミングの知識が必要です)
資産を全世界株式で保有
全世界株式(オールカントリー)のリスクとリターン
シミュレーションを行うために、全世界株式のリスクとリターンを想定する必要があります。これには、myIndexの資産配分ツールを利用しました。
過去30年実績でみると平均リターン9.4%, リスク18.3%ということです。
リターン 9.4%
リスク 18.3%
資産額
シミュレーションでは、資産額として3000万円、5000万円、1億円とします。また、期間中の収入は無い(ゼロ)とします。
期間
期間は最大100年としました。100年を超えた場合は100年で打ち切ります。
毎年200万円取り崩す場合
表の見方は以下になります。
- 平均 平均何年間生活できるか
- 中央値 50%の確率で生活できる年数
- 最短 シミュレーションで最悪だったパターンの年数
- 最長 シミュレーションで最良だったパターンの年数
- 75%の確率で 75%の確率で生活できる年数
注目する数値は、中央値と75%の確率でだと思います。また、最短も気にした方が良いかと思います。最短は、シミュレーションの結果の中で最も短い期間で資産がゼロになった年数です(10万回に1回はそういうことがあったということを示しています)
200万円を取り崩す場合は、3000万でも75%の確率で26年以上生活できる結果となりました。結果をみると200万円を取り崩して生活できる場合は、5000万円あれば十分に見えます。
最短をみると1億円でも12年で資産がなくなっています。大暴落が続いたりした場合は、こういうこともありうるということだと思います(確率は10万分の1とかだと思いますが)。
非課税口座(NISAなど)でなければ、利益に20%の税金がかかるので、手取りでは200万円を切る可能性があることに注意
資産額 | 平均 | 中央値 | 最短 | 最長 | 75%の確率で |
3000万円 | 69.27年 | 100年 | 4年 | 100年 | 26年以上 |
5000万円 | 91.81年 | 100年 | 8年 | 100年 | 100年以上 |
1億円 | 99.19年 | 100年 | 12年 | 100年 | 100年以上 |
モンテカルロ法の特性上、最短と最長はばらつくことがあります
毎年300万円取り崩す場合
300万円は月25万円です。なんとなく、これくらいの取り崩しを想定していればいいのではないかと考えています。
300万円取り崩す場合は、5000万円でも75%の確率で34年以上になります(つまり、25%の確率で34年未満で資産が尽きる)。
資産額 | 平均 | 中央値 | 最短 | 最長 | 75%の確率で |
3000万円 | 39.53年 | 20年 | 3年 | 100年 | 13年以上 |
5000万円 | 75.71年 | 100年 | 4年 | 100年 | 34年以上 |
1億円 | 96.65年 | 100年 | 8年 | 100年 | 100年以上 |
毎年500万円取り崩す場合
500万円の取り崩しの場合は、3000万円、5000万円では少し不安です。FIREの場合は、生活費(年間の支出)も大切なことがよくわかります。
資産額 | 平均 | 中央値 | 最短 | 最長 | 75%の確率で |
3000万円 | 12.21年 | 9年 | 3年 | 100年 | 7年以上 |
5000万円 | 39.41年 | 20年 | 3年 | 100年 | 13年以上 |
1億円 | 84.43年 | 100年 | 5年 | 100年 | 100年以上 |
物価上昇率を加味(物価上昇率2%)
毎年2%の物価上昇で取り崩す額が増える想定した場合です。ここでは、300万円取り崩す場合についてのみ計算しました。物価上昇率を2%加味してもそれほど変化はない印象です。
資産額 | 平均 | 中央値 | 最短 | 最長 | 75%の確率で |
3000万円 | 26.86年 | 16年 | 3年 | 100年 | 12年以上 |
5000万円 | 59.00年 | 46年 | 5年 | 100年 | 22年以上 |
1億円 | 90.10年 | 100年 | 9年 | 100年 | 100年以上 |
全世界株式:先進国債券 = 70:30
全世界株式に債券を加えてポートフォリオを組んだ場合の例です。今回は株式:債券=70:30というパターンを選択してみました。
リスクとリターン
全世界株式:先進国債券 = 70:30の平均リターンは8.4%, リスクは14.7%で計算しました。
リターン 8.4%
リスク 14.7%
全世界株式で全て保有する場合と比較して、リターンは1%減りますが、リスクは4%弱と大きく低下しています。この場合について同様のシミュレーションを行ってみました。
毎年200万円取り崩す場合
赤い文字が、改善した部分です。
リスクを減らしたので「75%の確率で」の項目が変化すると想定していましたが、3000万円の場合が大きく改善したのがわかります。
資産額 | 平均 | 中央値 | 最短 | 最長 | 75%の確率で |
3000万円 | 68.97年 | 100年 | 6年 | 100年 | 28年以上 |
5000万円 | 94.36年 | 100年 | 8年 | 100年 | 100年以上 |
1億円 | 99.80年 | 100年 | 15年 | 100年 | 100年以上 |
毎年300万円取り崩す場合
リスクを減らした分、「75%の確率で」の項目が改善しています。
資産額 | 平均 | 中央値 | 最短 | 最長 | 75%の確率で |
3000万円 | 33.84年 | 19年 | 4年 | 100年 | 14年以上 |
5000万円 | 76.72年 | 100年 | 7年 | 100年 | 38年以上 |
1億円 | 98.43年 | 100年 | 11年 | 100年 | 100年以上 |
毎年500万円取り崩す場合
500万円の取り崩しになると3000万円では、リスクを減らした効果が見えないようです。リスクを減らして効果があるのはある程度の資産額があってこそなのかもしれません。
資産額 | 平均 | 中央値 | 最短 | 最長 | 75%の確率で |
3000万円 | 10.03年 | 9年 | 3年 | 100年 | 7年以上 |
5000万円 | 33.72年 | 19年 | 4年 | 100年 | 14年以上 |
1億円 | 87.04年 | 100年 | 8年 | 100年 | 100年以上 |
JavaScriptによる資産の寿命電卓
JavaScriptで「資産の寿命計算電卓」を作ってみました。以下の項目を設定して計算ボタンを押すと、平均、中央値、最短、最長、75%の確率を計算してくれます。
モンテカルロ法なので、計算するたびに少しづつ値が変化しますが、これが正常です。
参考値(資産別のリスクとリターン)
資産 | リターン | リスク |
現金 | 0.01% | 0% |
日本株 | 6% | 17% |
米国株 | 12% | 18% |
先進国株 | 11% | 19% |
エマージング株 | 9% | 22% |
日本債券 | 1% | 2% |
先進国債券 | 4% | 8% |
エマージング債券 | 7% | 11% |
金 | 10% | 16% |
モンテカルロ法によるシミュレーション
以上、モンテカルロ法をつかって、「X万円の資産を、毎年Y万円取り崩した場合、何年生活できるのか?」を計算してみました。
モンテカルロ法は、乱数(サイコロ)を振って計算する方法で、何度もサイコロを振れば確率が収束するという理屈に基づくものです。なので、上で計算した結果も多少は上下すると思います。ただ、10万回もサイコロを振っているのでそこまで大きく変わらないです。
どちらかというと、リスクとリターンの想定と現実のずれの方が大きいと思います。
リスクとリターンはあくまでも過去実績で将来を保証するわけではないです
モンテカルロ法は、複雑な計算式も必要なく手軽にシミュレーションできるので便利です。
また、「40歳でFIREして毎年300万円取り崩し、65歳からは年金が入るので取り崩しは150万円」などの複雑な条件や、「10年後にリフォームで500万円」などの条件も含めてシミュレーション可能です。
まとめ
以上、資産の取り崩しのシミュレーションを行ってみました。
いくらくらいあればFIREできるのか? 何年くらいで資産が尽きる可能性があるのかなどの参考になれば幸いです。
シミュレーションした感想は、「やっぱり、1億円あれば安全だなぁ」ということです。