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ファイナンシャル・プランニングの「6つの係数」|数式を理解して知識に差をつけよう

FPが使う6つの係数の解説と導出
tadanori
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この記事では、ファイナンシャル・プランニングで使われる6つの係数について、その式と使い方、および導出の仕方について説明します

この記事は以下のような方におすすめです
  • ファイナンシャル・プランニングで使う6つの係数の使い方を知りたい
  • FP試験ではテーブルで与えられる、6つの係数の計算式に興味がある
  • 計算式をどうやって導出するかに興味がある

6つの係数

終価係数」「現価係数」「年金終価係数」「減債基金係数」「年金現価係数」「資本回収係数」と呼ばれる、ファイナンシャルプランニングで使う6つの係数があります。

FP資格試験の3級から出題されるお馴染みなものですが、試験に関係なく、使い方を知っていれば便利な係数です。

なお、FP試験で学習した方も、これらの係数は「3%の金利の場合」などの特定の条件に対して、テーブル形式で与えられるため計算式を意識したことは少ないかもしれません。

ある
ある

私も、FP3級試験で初めて6つの係数を知りましたが、当時は係数の役割だけを暗記していました。

FP2級、1級の試験でも、式を問われるような問題はなかったですね

ある
ある

試験対策としては、式を暗記したことはないですね。

多くの場合、条件が色々異なるのでテーブルより、式から計算した方が応用が効きます。「年利いくらならどうだろう?」「年数を少し伸ばしたらどうなる?」みたいな検討は、式を使った方が楽です。

この記事では、記事を前半と後半に分けて以下ような説明を行います

記事前半

  • 係数の使い方
    それぞれの係数がどんなふううに使えるのかを解説します。ローン計算や積立預金の計算に役にたちます。
  • 係数の式を紹介
    計算式だけを紹介します。少し複雑な式のものものありますが、スマホなどの関数電卓アプリを使って計算できます

記事後半

  • 6つの係数の導出方法を解説
    すこし数学的になります。興味がない方は飛ばしてください。数学的にどうやって係数を導出するのかを解説しています。
ある
ある

ファイナンシャル・プランナー(CFP®)兼データサイエンティストということで、導出にも興味がありましたので、今回、少し頑張って導出しました。

私は、数列の分野に興味がある方は後半も一読ください。

6つの係数とは

以下では、年利率を$r$, 年数を$n$として表記しています。

終価係数$(1 + r)^n$

ある
ある

手持ちのお金を運用すると、将来いくらになるかを計算する係数です

終価係数の式

$$
(1 + r)^n
$$

元本が年利率rでn年間運用した場合に、いくらになるのか計算するための係数です。

100万円を10年間、年利率7%で運用した場合は、$100 (1 + 0.07)^{10} \approx 196.7万円$となります。

ある
ある

ちなみに、FP3級などでは、下記のように係数が与えられます。どの係数を使うかを問う問題が多いです。

終価係数現価係数
10年1.9670.508

現価係数$(1+r)^{-n}$

ある
ある

数年後にまとまった額を準備したいとき、現在いくら手元にあれば良いかを計算する式です

現価係数の式

$$(1+r)^{-n}$$

n年後にX円を準備したいとき、年利rで複利運用した場合に元本はいくら必要かを計算する係数

100万円を10年後に用意したい場合、年利率7%で運用する場合は、$100 (1 + 0.07)^{-10} \approx 50.8万円$となります。

ある
ある

ちなみに、FP3級などでは、下記のように係数が与えられます。どの係数を使うかを問う問題が多いです。

終価係数現価係数
10年1.9670.508

年金終価係数$\frac{(1+r)^n – 1}{r}$

ある
ある

人気の積立投資に関係する式です。一定額を積立ながら運用すると将来いくらになるか計算できます

年金終価係数の式

$$\frac{(1+r)^n – 1}{r}$$

毎年一定額を積み立てながら年利率rで運用した場合、n年後にいくらになるかを計算するための係数です。積み立て投資の場合は、この係数を使って考えます。

毎年5万円積立ながら年利率2%で10年間運用した場合、$5*\frac{(1+0.02)^{10}-1}{0.02} \approx 54.75万円$

ある
ある

このあたりから計算が面倒になりますがエクセルとかスマホの関数電卓アプリを使えば簡単に計算できます。

減債基金係数$\frac{r}{(1+r)^n – 1}$

ある
ある

目標額を得るために、いくらづつ積み立てれば良いかを計算する式です。使う時期が決まっている、教育資金などに必要な積立額を計算できます。

減債基金係数の式

$$\frac{r}{(1+r)^n – 1}$$

n年後に目標額を受け取る場合、年利率rの場合に毎年いくらづつ積み立てれば良いかを計算するための係数です。

年利率3%で20年後に2000万円を受け取りたい場合、$2000*\frac{0.03}{(1+0.03)^{20}-1} \approx 74.43万円$

年74万4300円なので、月62000円積み立てると20年で2000万になる計算です。利子なしだと1488万なので、3%でも複利効果はかなりのものです。

年金現価係数$\frac{1-(1+r)^{-n}}{r}$

ある
ある

取り崩しの式です。毎月一定額を受け取るには、資産がいくらあれば良いかを計算できます

年金現価係数の式

$$\frac{1-(1+r)^{-n}}{r}$$

現在の資金を年利率rで運用しながら、n年間一定額を受け取る場合に資金はいくら必要かを計算するための係数です。積み立てではなく、取り崩す時の係数になります。

年利率2%で運用しながら、10年間毎年60万円受け取る場合、$60*\frac{1-(1+0.02)^{-10}}{0.02} \approx 538.96万円$

資本回収係数$\frac{r}{(1+r)^n – 1}$

ある
ある

主に、ローンの計算に使われる式です。借りたお金を返す場合の返済金額を求めることができます

資本回収係数の式

$$\frac{r}{(1+r)^n – 1}$$

資産を年利率rで運用しながら、n年間一定額を毎年受け取る場合、いくら受け取れるかを計算するための係数です。住宅ローンの計算などにも使えて、その場合は、「借金額を金利rでn年間で返済するには、いくら払えば良いか」と読み替えます。

1000万円を年利率3%で運用しながら10年で受け取る場合、$1000*\frac{r}{(1+r)^n – 1} \approx 117.23万円$

ある
ある

カーローンで考えると、300万を金利1.5%で5年で支払うとかになります。すると月に約5.23万円、合計支払金額はおおよそ313.63万円となります。年金利1.5%でも約13.63万余計に払うことになる

ちなみに、同じ5.23万円を5年間金利0.5%で積み立てると約316万円。年金利0.5%でも貯めてから購入すれば16万円分グレードアップできますね

ある
ある

貯めてから買うか、買ってから払うかで結構違うね。

ローンと貯蓄して買うの違いはこちら
発想の転換による節約法の提案:ローンから貯蓄して購入に切り替えた時の金銭的メリットを試算
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6つの係数を数学的に導出してみた

ここからは、数学的な内容になります。それぞれの係数を導出してみます。数式を立てるまでがちょっと面倒な係数もありましたがなんとか全部解くことができました。

ある
ある

注意して計算しましたが、もし、間違っていたら指摘してください。

数式エディタの入力ミスもありえるのでよろしくお願いします

終価係数

$終価係数 = (1 + r)^n$

将来の金額=元本x終価係数

1年後は$元本\times(1+r)$。

2年だと$元本\times(1-r)\times(1-r)=元本\times(1-r)^2$。

$n$年だと$元本\times (1 + r)^n$。なので、終価係数は$ (1 + r)^n$

これは、等比数列の解の公式でも解けます。

現価係数

$現価係数=(1+r)^{-n}$

元本=目標金額x現価係数

終価係数の式から、将来の金額(目標金額)=元本x終価係数。

元本を左辺にすると、$元本=\frac{将来の金額}{終価係数}$。

$\frac{1}{終価係数}=(1+r)^{-n}$。これが現価係数

年金終価係数

$年金終価係数=\frac{(1+r)^n – 1}{r}$

将来の金額=積立額x年金終価係数

これを求めるのは少し面倒です。

毎月の積立額を$x$、$n$年後の金額を$a(n)$を定義します。

最初は0円なので、$a(0) = 0$です。

$n+1$年後は$n$年後の金額に$r$の金利がついて、さらに$x$円新たに積立られるので、

$a(n+1) = (1+r)a(n) + x$

という式で表すことができます。この$a(n+1)=p\dot a(n) + q$の形の漸化式は、高校で習ったように漸化式の解き方を使って解くことができます。

特性方程式は、

$$\begin{eqnarray}
\alpha &=& (1+r)\alpha + x\\
-r\alpha &=& x\\
\alpha &=& -\frac{x}{r}
\end{eqnarray}$$

となり、上の式は、

$(a(n+1) – \alpha) = (1+r)(a(n) – \alpha)$と書き直すことができます。

ここで$b(n)=a(n) – \alpha$とすると、

$b(n+1) = (1+r)b(n)$、$b(0) = a(0) – \alpha = \frac{x}{r}$となります。

これを解くと、

$b(n) = \frac{x}{r}(1+r)^n$

$a(n) = b(n) + \alpha = \frac{x}{r}(1+r)^n – \frac{x}{r} = x\frac{(1+r)^n – 1}{r}$

式中の$a(n)$は将来の金額、$x$は積立額ですので、$年金終価係数=\frac{(1+r)^n – 1}{r}$となります。

減債基金係数

$減債基金係数=\frac{r}{(1+r)^n – 1}$

毎年の積立額=将来の目標金額x減債基金係数

これも普通にするとややこしいですが、先ほどの結果を使うと簡単です。

n年後の目標金額を$a(n)$、減債基金係数を$g$とすると、

定義より毎月の積立額$x = g\cdot a(n)$となります。

目標金額は年金終価係数の将来の金額と等しいとして、先ほどの式に代入します。

$a(n) = {g \cdot a(n)}\frac{(1+r)^n – 1}{r}$

これを$g$について解くと、

$g = \frac{a(n)r}{a(n)((1+r)^n – 1)}=\frac{r}{(1+r)^n – 1}$

となります。

年金現価係数

$年金現価係数= \frac{1-(1+r)^{-n}}{r}$

元本=毎年の受取額x年金現価係数

年金現価係数を$g$、n年目の残金を$a(n)$、毎月の受取額を$x$とすると、

$a(n+1) = (1+r)a(n) – x$となります。

式の意味は、n+1年目の残金は、n年目の残高に利子がついて$x$円だけ受け取ったということになります。

最初の元本は、年金現価係数の式から$a(0)=x \cdot g$となります。

これも漸化式で解くことができます。特性方程式は、

$$\begin{eqnarray}
\alpha &=& (1+r)\alpha – x\\
r\alpha &=& x\\
\alpha &=& \frac{x}{r}
\end{eqnarray}$$

となり、上の式は、

$(a(n+1) – \alpha) = (1+r)(a(n) – \alpha)$と書き直すことができます。

ここで$b(n)=a(n) – \alpha$とすると、

$b(n+1) = (1+r)b(n)$、$b(0) = a(0) – \alpha =x \cdot g – \frac{x}{r} $となります。

$b(n) = b(0)(1+r)^n = \frac{x(rg-1)}{r} (1+r)^n $

$a(n) = \frac{x(rg-1)}{r} (1+r)^n + \frac{x}{r}$

ここで、n年目の残高は0、つまり$a(n)=0$なので、これを代入して整理すると、

$g=\frac{(1+r)^n-1}{r(1+r)^n} = \frac{1-(1+r)^{-n}}{r}$

となります。

資本回収係数

$資本回収係数=\frac{r}{(1+r)^n – 1}$

毎年の受取額=元本x資本回収係数

年金現価係数を積立額と解けばこの式です。

元本=毎年の受取額x年金現価係数を毎年の積立金について解けば、

毎年の積立金=元本/年金現価係数となり、資本回収係数が導出できます。

まとめ

前半は、FPが使う6つの係数について説明しました。複利計算、積立計算、ローン計算、色々な場面で使えるので、こういう係数があるというのは覚えておくと便利です。

後半は、数学的に係数を導出してみました。やってみて、高校数学のレベルで導出できることに気づいたのは発見でした。特に、漸化式とかつい最近も学び直ししたばっかりだったりします。

係数がどうやって計算されているかモヤモヤしていた人の役に立ったら嬉しいです。

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ある/Aru
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)/ 博士(情報工学)
2023年5月に54歳で早期退職。自分の時間ができたのでブログを開設。本職はITエンジニア(専門はデータ分析・機械学習)だが、ファイナンシャル・プランナー(CFP®)資格も保有し活動中。投資歴は20年以上。
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